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遠隔診療 サイバー攻撃対策の視点は十分か[お茶の水だより]

No.4870 (2017年08月26日発行) P.25

登録日: 2017-08-24

最終更新日: 2017-08-23

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▶診療所と中核病院による遠隔診療連携と在宅患者の遠隔モニタリングの実証プロジェクトが進む某県某地方。ある日、在宅患者の心電図波形やペースメーカーの稼働状況などを24時間監視する病院のセンターで、患者データの受信が次々に不安定化する事態が起こった。数日後には、ペースメーカーなどの誤作動が原因とみられる救急搬送が続発。翌日、病院に1通のメールが届く。医療機器の誤作動はハッキングの結果である。1億円相当のビットコインを支払え。さもなければ機器の誤作動で複数の患者に心停止を起こさせる─。
▶これは、一般社団法人CSAジャパンが今月公表した、仮想のサイバー攻撃事例の1つだ。この事例では、病院の複数のパソコンからマルウェア(悪意あるソフトウェア)が検出され、管理サーバー内からもハードウェアを制御するソフトウェアの改竄が発見。システム管理用ネットワーク内に、インターネット接続が可能かつセキュリティが脆弱な状態のパソコンが存在していたことが、外部からの改竄・操作を許した要因とされている。
▶トレンドマイクロ社の調査によれば、全世界で10万件以上の医療機器がネットを介して外部から直接アクセス可能な状態にあり、その約2%は日本のIPアドレスだという。遠隔診療のシステムを狙ったサイバー攻撃も絵空事ではあるまい。
▶遠隔診療の導入を巡っては、対面診療と比べた医療の質にはよく論及されるが、情報セキュリティの視点からの議論はあまり行われていない。遠隔診療を国策として進め、普及を図る以上、安全な医療提供を脅かすサイバー攻撃への対策についても本格的に検討を始め、医療界全体の情報セキュリティの底上げにつなげるべきではないか。

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