自宅では3匹のチワワを飼っています。1匹が母親犬(ナル、14歳)で、残りの2匹がその子どもです。ナルは8年ほど前に乳腺腫瘍の摘出術を行っています。自宅でなにげにナルの乳房のしこりに気づき、近所のかかりつけ獣医に連れて行ったところ、やはり乳腺腫瘍として間違いないとのこと。当然のことながら針生検で良悪性診断を行うものと思っていましたが、獣医業界では病理医が少なく、術前の細胞診は困難とのこと。やむなく良悪性の鑑別もなく摘出術となりました。さらに同側の乳腺への転移が多いとのことで、片側乳腺の全摘術になってしまいました。術後の細胞診では良性の乳腺腫との結果で、嬉しいやら虚しいやら……。
その後、ナルは元気に過ごしていましたが、2年前に獣医で定期健康診断を受けた際、肝トランスアミナーゼが著しく高値であったため、腹部超音波検査を依頼しました。一緒にエコー画像を見せてもらうと、肝左葉外側区域に巨大な高エコー腫瘤を認めました。「肝血管腫ですか?」と尋ねると「エコー所見がどうであろうと、犬の肝臓腫瘍は十中八九肝臓癌です」。「そうなのか、とにかく急がなくては」。
ということで、当大学と同一法人の獣医大学・動物医療センターで入院手術をして頂きました。結果は、やはり原発性肝癌でした。術前診断に間違いはありませんでしたが、エコーで鑑別診断なしというのも悲しいので、後日、懇意にしている同獣医大学の放射線科教授に出版社を紹介し、犬・猫画像診断のテキストを執筆して頂きました。
さて、術後2年を経過したナルは、今も元気に家中を走り回っています。ただ、歯は抜けるは、耳は遠くなるは、といった状態で、何を考えているのか、ボーッと一点を見続けることも多々あります。
現在、付属病院の関連施設である健診医療センター(PETセンター)では、アルツハイマー病診断のためのアミロイドβイメージングを用いた治験を行っています。ナルもアミロイドイメージングで陽性なのかな、とは思いますが、元気であれば問題ないですね。