10年以上前のことです。診療所に近い会社から社員健診の依頼があり、40歳の男性が来院されました。
診察の前に検査を受けて頂きましたが、看護師が「心電図に異常があります」と言ってカルテを持ってきました。心電図を見ると確かにⅡ、Ⅲ、aVfにQ波が認められました。何もなさそうに診察室に入ってきた男性に詳しく問診してみると、前日スイミングのあとで立ちくらみ、呼吸困難感、腕のシビレ感を認めたとのことです。「心電図で心筋梗塞の疑いがあるので追加検査を受けて頂きたい」と説明すると了解されました。そしてH-FABPの迅速検査をしたところ陽性でした。あれれ、本当に急性心筋梗塞だ! との診断となり、歩いて健診に来たこの男性は循環器病院へ緊急受診することになりました。
病院での血液検査でCK上昇があり、心エコーで下壁の収縮力低下があり、冠動脈造影にて右冠動脈#2に血栓を伴う狭窄が確認されました。男性はステント治療を受け、順調に経過して退院しました。この方は二次予防のために、その後ずっと当院に通院を続けています。
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