今時の研修医Aくんは病院にほど近い寮に住んでいます。徒歩10分弱なのでいつもラフな私服にお気に入りのサンダル履きで通勤しています。通勤中に病院職員,患者さんやその家族にお会いすることもあります。職場ではスクラブに着替えますが,サンダルはそのままで1日を過ごします。
多くの社会人マナー本<sup>1)2)では「身だしなみは足元から」とあり,足元に及ぶ気配りは高く評価されます。特に医療現場では震災時に破損した医療器材で足を負傷した多くの医療従事者の教訓から,踵と甲の部分が完全に覆われている院内履きが推奨され,私立医科大学病院感染対策協議会の相互ラウンド・サイトビジット評価表の項目にも含まれています3)。
若手医師の中にもAくん同様のサンダル履きがいます。その多くが踵や甲の部分が完全に覆われず,甲部分に多数の穴があるcrocstm typeです。これでは踵や甲の部分が無防備で,血液・体液の曝露や注射針・メスなどの落下による負傷の危険を伴います。また,現場ではストレッチャー移動時に誤って足を踏まれ負傷することもあります。各医療機関によって院内履きを含む服装規定は多少異なるでしょうが,海外では医療安全面でこの型のサンダルが禁止となった病院があります4)。
一方で,踵や甲の覆われた医療(職場)用シューズがcrocstm等各社から販売されています。
院内履きに限らず,医療現場での身だしなみにおいては機能性や医療安全対策はもちろん大切です。しかし,最終的な評価は,患者さんやその家族,職場で働く人々の目に耐えうるべきものであることを肝に銘じましょう。
文 献
1) 弘兼憲史:知識ゼロからのビジネスマナー入門. 幻冬舎, 2002, p8-9.
2) 高橋書店編集部:さすが!と言われるビジネスマナー完全版. 高橋書店, 2010, p18-9.
3) 一般社団法人日本私立医科大学協会, et al:私立医科大学病院感染対策協議会の相互ラウンド・サイトビジット評価表 第3版 p15③-7-2[http://www.idaikyo.or.jp/pdf/kansen.pdf]
4) BBC News.(5. September 2007):Crocs cause nurse safety concern.[http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/6979400.stm]