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慢性心不全

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
山中 崇 (東京大学医学部在宅医療学拠点特任准教授)
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  • ■疾患メモ

    慢性心不全患者の平均年齢は70歳前後であり,原因疾患として虚血性心疾患が1/3を占め,弁膜症,高血圧が続く。

    慢性心不全患者の再入院率は高く,突然死を生じることもあり,生命予後は良くない。心不全の増悪因子として服薬アドヒアランスの低下,塩分や水分の過剰摂取には特に注意する。

    在宅医療の役割は,包括的ケアに基づく安定した状態の維持および増悪の予防,急性増悪時の治療,緩和ケアを提供することにより住み慣れた地域での生活を継続することができるよう支援することにある。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    重度心不全,末期心不全では呼吸困難,疼痛,倦怠感,不安,抑うつなどの頻度が高い。

    【検査所見】

    在宅医療では胸部X線検査や心エコー検査を適宜実施することが困難な場合が多い。血圧,脈拍数,呼吸状態,経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の測定とともに,体重およびBNPまたはNT-proBNPの測定が有用である。

    BNP 100pg/mL以上またはNT-proBNP 400pg/mL以上の場合,治療を考慮する。ただし両者とも個人差が大きく,不整脈の影響も受けやすいため,心不全が安定している時期に測定し,変化をとらえて対応する。

    ■治療の考え方

    服薬アドヒアランスの低下,塩分や水分の過剰摂取は慢性心不全悪化の誘因となる。日常生活の管理が大切であり,訪問診療,訪問看護の際にはこれらの状況を確認する。

    疾患管理では肺炎や尿路感染症,腎不全の進行に注意する。

    慢性心不全では治療を目指した薬物療法が症状緩和につながるため,それまでの治療を継続しながら症状緩和に努める。それでも緩和されない呼吸困難や不安がみられる際には,オピオイドやベンゾジアゼピン系薬剤の使用を検討する。終末期には輸液を控えることが症状緩和につながる。

    ■アセスメントのポイント

    診察の際には血圧,心拍数,SpO2値に加え,心音の聴取ではⅢ音の有無および心房細動を含む不整脈の有無,末梢の浮腫に注意する。体重が心不全のコントロールのよい目安になるため毎日体重を測定し,変化を把握する。BNP,NT-proBNPの変化が心不全の状態を反映する。解釈する際には不整脈や腎機能に注意する。

    在宅医療では容易に画像検査を実施できないことが多いが,今日では小型の超音波装置が使えるようになっており,心臓超音波検査を実施できる場合には有力な診断ツールとなる。生活の状態および生活を支援する体制の確保にも留意する。

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