【質問者】
中神由香子 京都大学大学院医学研究科脳病態生理学 講座(精神医学)
てんかんは,約100人に1人が罹患する有病率の高い疾患であるため,どの科の医師であってもてんかん発作に遭遇する可能性は比較的高いと言えます。発作の種類によって対応方法が異なるため,場合わけして考えましょう。
意識消失および全身の強直けいれん,間代けいれんを起こす病態です。転倒による受傷を避けるため,まずは安全を確保する必要があります。ベッドや地面に横にする,周囲の危険なものを移動させるなど対応して下さい。そして発作が数分以内に治まるものであれば良いですが,発作が遷延するてんかん重積状態に移行する場合は,即座の対応を要します。30分以上遷延すると脳に長期的な影響を残すリスクがあると言われており,5分以上遷延する場合は治療介入を決断する必要があります。
てんかん重積状態の治療介入の第一選択は,ジアゼパム(ホリゾン®,セルシン®)10mgの静注です(小児は0.3~0.5mg/kg。最大20mg)。筋注ではほとんど効果がないため,静注するというところがポイントです。またジアゼパムは生理食塩水やブドウ糖液で稀釈すると混濁してしまうため,10mg/2mLのアンプルをそのままシリンジで吸って,1分以上かけて静注して下さい。効果がない場合は10分後に再投与が可能です。76%のてんかん重積はジアゼパム静注により頓挫できますが,それでも治まらない場合は,ホスフェニトイン(ホストイン®)22.5mg/kgやレベチラセタム(イーケプラ®)1000mgの点滴を検討する必要があります。ただし,レベチラセタムにはてんかん重積の適応がないことにご注意下さい。
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