監修: | 赫 寛雄(東京医科大学脳神経内科主任教授) |
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監修: | 橋本孝朗(東京医科大学脳神経外科准教授) |
著: | 菊野宗明(東京医科大学脳神経内科助教) |
判型: | A5判 |
頁数: | 170頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2024年03月03日 |
ISBN: | 978-4-7849-4584-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
プロローグ
1章 初期対応編
1.プレホスピタル
2.病歴聴取
3.NIHSS
4.画像診断
5.rt-PAと血栓回収療法のエビデンス
2章 症例編
6.救命センター典型例:被殻出血
7.救命センター要注意例:その他の脳出血
8.救命センター典型例:動脈瘤破裂
9.一般外来典型例:塞栓源不明脳塞栓症(ESUS)
10.救命センター要注意例:脳底動脈閉塞と椎骨動脈解離
3章 予防編
11.一過性脳虚血発作(TIA)
12.脳梗塞の外科的予防:頸動脈狭窄症
13.脳卒中の合併症とリスク因子の管理
エピローグ
コラム❶脳卒中診療のアプリ
コラム❷いまさら聞けない,「脳卒中」って何だ?
コラム❸神内流!脳卒中の問診のTips!
コラム❹神経診察の歴史から
コラム❺救急外来における頚動脈エコー:CURE
コラム❻新たなrt-PA「テネクテプラーゼ(tenecteplase)」
コラム❼Mobile Stroke Unit
コラム❽日本発のもやもや病
コラム❾フローダイバーターステントと脳血管内治療デバイス
コラム❿ブレインハートチームと循環器内科医による脳卒中のカテーテル治療
コラム⓫脳卒中と遺伝子異常
コラム⓬TIAクリニック
コラム⓭未破裂脳動脈瘤
コラム⓮COVID-19と脳卒中
序
「脳卒中に関する新しい教科書をつくりませんか?」,日本医事新報社さんよりお声掛けを頂いた時,嬉しい驚きの反面,戸惑いもありました。現在,医師13年目,脳卒中専門医としても6年目の中堅の年次で,どのような教科書がつくれるかと自問自答をした時に,少し前まで研修医やレジデントであった立場から,先輩が気軽に相談に乗るように脳卒中診療の基本やポイントを伝える,そうした教科書であれば今の立ち位置だからこそ書けるのではないかと考えました。
私のキャリアパスは,初期研修から一貫して指導医にとても恵まれてきました。学生時代に,超急性期の脳梗塞患者がrt-PA静注療法と当時まだエビデンスのなかった血栓回収療法で劇的に改善するのを見て(ちょうど本書に登場する研先生や若き日の外納先生のように)脳卒中診療に魅せられ,本書を監修頂いた赫先生,橋本先生らには脳神経内科,脳血管内治療の基本から教わり,脳卒中診療の総本山ともいうべき国立循環器病研究センターの豊田先生らからは正に診療のエッセンスを学ばせてもらいました。
本書の特徴として,初期研修医と救急・総合診療科,脳神経内科,脳神経外科のそれぞれの指導医のキャラクターが登場し,彼らの掛け合いや協働を通じて脳卒中診療のファンダメンタルを学べる点にあります。キャラクターが登場する構成には賛否両論あるかもしれませんが,脳卒中領域にはチームダイナミクスに基づく楽しさがあり,脳卒中センターでのチーム医療が重要視される現場感も含めて伝わればと思いました。その思いは,魅力的なイラストによって大いに再現できたと思います。内容についても,充分なエビデンスと数々の経験を可能な限り詰め込み,入口は広くとも脳卒中診療の高みや深淵に触れられる書になっております。
序
また各章の始まりには「超目標」として章のポイント3つを簡潔にまとめ,初期診療で重要になる薬剤については「処方例」を載せて,多くの症例や画像を元に,実臨床に即した構成とし,自分が初期研修の時にこうした本があればと思った教科書を目指しました。脳卒中関連科をローテートする初期研修医はもちろん,脳神経系の専攻医,救急・総合診療医,指導医の先生方やコメディカルの方々,医学生の皆さん,いずれにとっても必ず得るものがある書になったと自負しております。本書を通じて,どのような形であれ,脳卒中センターでともに診療してくれる仲間が1人でも多く増えてくれることを信じています。
2024年2月 著者
推薦の言葉
菊野宗明先生が大阪で私たちとともに脳卒中診療に励んだのは,今から10年近く前のこと。国立循環器病研究センター(国循)への採用面接のときに「本気で脳卒中診療を学びたい」と話し,将来の夢に「学生教育」を挙げておられました。その後も菊野先生の語る夢には必ず教育の話が出てきて,それが実現するよう手助けできればと思っていました。
このたびの『脳卒中センターでファンダメンタルを学ぶ スタートアップ!脳卒中診療』,とても面白いですね。ともすれば言葉遣いが難しくなってしまう脳卒中の診断や治療に関する説明を, 会話調で読みやすく書き進めています。この会話のノリは病棟回診? いや,菊野先生が居られた頃に国循医局の談話室で,一筋縄では行かない症例にどう立ち向かうか,レジデントの皆でワイワイと討議したときの雰囲気ですね。項目立ても重要な課題を網羅していますし,図表の使い方もセンスが良いです。研修医,脳卒中の初学者はもとより,看護師や技師をはじめとする多職種の医療者,学生,あるいは一般の方々にも,興味深く読んでいただけるでしょう。若い人たちが脳卒中の何を知りたがり,脳卒中診療の何に困っているのか,日頃から彼らの声を吸い上げている菊野先生なればこそ,的確にツボを押さえて編集されたのでしょう。
私が修練医の頃(昭和から平成に移った頃)は脳卒中の特効薬もなく,検査手段も限られ(神経超音波も確立していない時代でした),専ら症候学と主にCT診断で脳卒中と対峙していました。今や修得すべき診断技術,実践すべき治療法は飛躍的に増え,それを要領よく覚える必要がある皆さんは,たいへんだとお察しします。学問に近道はないかもしれませんが,限られた時間の中で学ぶべき基本項目(ファンダメンタル)を楽しく適切に道案内してくれる本書に,先ず脳卒中についての基本的な考え方を教えて貰いましょう。その先には,とてもダイナミックで手応えのある,また日本の国民病として多くの医療者が関わるべき,脳卒中診療の世界が広がっています。
2024年2月吉日
国立循環器病研究センター 副院長 豊田一則