日本医師会は20日、会内の「学術推進会議」(座長=清水孝雄 前日本医学会副会長)が人工知能(AI)と医療について取りまとめた報告書を公表した。AIの医療活用が日本の臨床現場に与える影響の大きさを「江戸時代の蘭方医学の到来に匹敵する」と表現。世界に先駆けて超高齢化を迎える日本で、医療従事者とAIが協調して最先端医療や予防を効率よく実施することで「世界に貢献できる可能性がある」と総括している。
報告書では、自動診断をはじめとする臨床応用が今後数年で劇的に進み、「医師の役割は大きく変わる可能性がある」と指摘している。診断支援システムに関しては、AIが導き出す予測や処方の論拠が人間に分かる「ホワイトボックス」を中心に据えた利活用を優先すべきと提言。AIが進歩しても診断の最終責任は医師にあり、患者や家族の経済、社会的背景、思想、宗教、心理などを考慮した治療方針の提示がますます重要になるとしている。
一方、結論に至った根拠が説明不能な「ブラックボックス」から得られた診断・治療については、新たな研究が産まれることに期待を示しつつ、AIのリスクや限界を認識すべきとしている。 同日の会見で羽鳥裕常任理事は、今後の方針について「7月に開かれる内閣府検討会で報告書の内容を説明する」と述べた。