大学病院は日頃、「日本の医療の牽引力」「地域医療の最後の砦」と持て囃されるが、何か問題が起きると、メディアやネット空間はもちろんのこと、役所の会議や時には国会など公式の場で感情的かつ極端な意見が交わされ、袋叩きにされる。医療安全や臨床研究などでこのようなことが繰り返され、大学病院への締め付けがどんどん厳しくなっていく。最近では製薬会社からの(正規の報酬である)講演料までも槍玉に上がっている。
安い給料ながらも、日々困難な症例に立ち向かい、学生や研修医への教育に熱心に取り組み、家族も省みずに研究に没頭する物好きな大学勤務医達は、シュンとなってしまう。
わが国の大学病院本院は82病院、そこで働く医師はおよそ6万人に及ぶ。医師の働き方改革の検討会議では、大学病院は特殊だからと別扱いされ、いまだに研究時間をどう管理するか検討すらされていない。全医師数の五分の一を占めているのに、特殊だろうか?
さらに、兼業の取り扱いがクローズアップされると、大学からのバイトが俄かに注目されている。この問題もうまく軟着陸させないと、「大学病院が地域医療を崩壊させた」と、あらぬ非難を受けかねない。
いずれにしろ、大学病院の現場で日々起きていることが、医療界も含め世間に正しく伝わっていないのではないか─。そんな思いを強く持ち、本稿の執筆をお引き受けした。暫くの間、大学病院からの(悲鳴のような)ぼやきにお付き合い願いたい。
そんな私の自己紹介を簡単に。1983年千葉大学医学部を卒業し、同大学眼科に入局。富山医科薬科大学、米国コロンビア大学、東邦大学などを経て、2003年千葉大学眼科教授、2007年から千葉大学病院副病院長を併任、2014年から病院長となって今年が6年目。眼科では網膜硝子体手術を専門とし、網膜色素変性の治療法開発をライフワークとしてきたが、病院長就任後は千葉大学病院の舵取りの他に、国立大学病院長会議の会長、厚生労働省や文部科学省関係の会議など奔走している。
山本修一(千葉大学医学部附属病院長)[大学病院]