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【識者の眼】「YouTubeは現代の分身の術である」押川勝太郎

No.5000 (2020年02月22日発行) P.64

押川勝太郎 (NPO法人宮崎がん共同勉強会理事長)

登録日: 2020-02-19

最終更新日: 2020-02-18

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筆者の専門は腫瘍内科医です。今のがん治療は外来治療が主体ですが、副作用の8割は自覚症状であり、多数の吐き気止めや医療用麻薬の自己コントロールが必要です。当然患者指導が重要ですが、とてもその時間が取れません。

そこで筆者はがんが命に関わる仕組みや治療戦略、薬の活用法などの患者教育用YouTube動画チャンネル「がん治療の虚実」(現登録数7500人)を開設し、そこにがん治療に共通する知識や副作用対策動画を400本以上登録しました。もちろん患者にはきちんと治療説明するのですが、「難しくてよくわからないですよね? 帰宅後に僕の動画で復習してみてください」と動画チャンネルのQRコードを渡し、自分のスマホで好きな時に視聴してもらっています(可能な方のみですが)。

今は副作用対策のパンフレットも充実していますが、文字を読むのは結構集中力と体力が必要です。副作用できつい人は読む気もしないでしょう。しかし動画ならば自分のベッドで横になって気軽に見ることができます。最近では動画で予習してきて「先生の言いたいことは要はあの動画のあの部分ですよね?」と言ってくれる患者も増えてきて、説明する時間を短縮できる場合も出てきました。

YouTubeは広告収入ばかりが話題となっていますが、やり方次第では無料で自分の分身を作り、仕事を減らしてくれるのです。忍者サスケの分身の術はたかだか10人くらいでしたが、YouTubeでは7500人(今のところ)もの分身を作れるのですから恐るべし(笑)。しかも近年、高齢者が雪崩を打ってスマホに移行しているようで、筆者のチャンネル視聴者層の3割は65歳以上で、45歳以上で区切ると9割を占めています。

ということで、最近、医療系YouTuber養成Facebookグループを発足させました。この文明の利器を活用したいドクターは是非ご参加ください。

押川勝太郎(NPO法人宮崎がん共同勉強会理事長)[医療系YouTuber]

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