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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:グレー・リノが暴れだした」神野正博

No.5007 (2020年04月11日発行) P.61

神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)

登録日: 2020-03-26

最終更新日: 2020-03-26

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新型コロナウイルス禍はあっという間に世界を駆け巡り、局地的な対応からパンデミックとして全世界的な対応が求められる局面となった。これまでの化石エネルギーを大量消費して、航空機や船舶でありとあらゆるところに移動し、洋の東西から取り寄せられた美酒や美食に舌鼓を打ち、「快適で」「豊かな」生活を送ってきた地球市民を震撼させている状況だ。残念ながら東京2020オリンピックの開催も延期となったことは止むを得ない選択だろう。

主に金融の世界に『ブラック・スワン Black Swan』という言葉と『グレー・リノGray Rhino(灰色のサイ)』という言葉がある。

われわれはスワンと言えば白い鳥だと思っている。黒鳥ブラック・スワンはあり得ないと思っている。その存在は見えにくいゆえに予見しにくいのだ。しかし、現実には存在する。したがって、発生する確率は低いが、発生すれば大きな影響を与える問題だとされ、主に発生の予測が難しい「金融危機」や「自然災害」を表す際によく使われてきた。

一方、図体の大きなグレー・リノはその存在に気が付いている。そして、草を食むおとなしいリノが一旦暴走すると、その攻撃力は凄まじく、誰も手が付けられなくなる。ここから転じ、われわれの視界の中にずっといたにも関わらず、普段はおとなしいゆえに「まぁ、大丈夫だろう」と軽視されてきたリスクや問題が爆発する場合に使われるという。

さて、今回のコロナ禍はどちらに当てはまるのか。われわれは、その存在に気が付いていたのか。コロナ禍の直前まで、目の前で議論されてきた環境破壊、海洋汚染、地球温暖化、そしてそれに伴う気象の変化はグレー・リノではなかったのか。根本的な問題の解決から目を逸らせ、経済発展のみを優先してきた西や東の超大国、その顔色をうかがう極東の島国の責任に対しての地球からのしっぺ返しだったのではないかと思われてならない。 

神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新型コロナウイルス感染症]

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