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【識者の眼】「新型コロナウイルスとの戦いと共存への中長期的見通し」和田耕治

No.5009 (2020年04月25日発行) P.60

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-04-14

最終更新日: 2020-04-14

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緊急事態宣言が4月7日に7都府県に出され、期間は5月6日までを一つのメドとしている。しかしながら、多くの医療関係者はすでに十分に理解されていると思われるが、この戦いと共存は中長期に及ぶ。

5月6日以降も、現在、自粛を要請されている事業者で、特に接待を伴う飲食店や飲酒を伴う会合の場は、継続して「できるだけ行かない」ような対応が求められる。事業者には今後の対策の検討が必要である。

また、すでに報道されているように、医療職はそもそも仕事で感染リスクが高いこともあり、感染リスクの高い場に行くことはクラスター発生のリスクがあるため引き続きの自粛が求められる。

医療機関で、現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療をしていなくても、今後、この診療を避けられるはずはない。そのため、できるだけ早い時期にCOVID-19の診療に慣れ、対応できるようにすることが求められる。すでにCOVID-19の患者が別の理由で入院した紛れ込み症例からの院内感染も日々報告されている。早めに攻略できた医療機関こそが今後も地域で生き残れる医療機関となるであろう。

1日100人の感染者が出れば、入院期間を平均2週間とすると、延べ1400(100人×14日)の病床が必要となるということになる。実際に多くの病床が埋まり、医療が崩壊している地域もある。

日本国内の地域を超えた移動もしばらく自粛が求められる。夏休みやお盆、そして正月の移動も含めて最低限にすることが求められる可能性が高い。海外への移動の再開はさらに時間を必要とする可能性がある。すでに、国際線もかなり減便しているが、今後の再開にあたっては世界的な流行を確認しながら慎重に行われる。

世界の中では、すでに都市を封鎖するほどの行動制限を行うことで、流行拡大を抑えることに成功している国や地域もある。中国も感染者数は落ち着いているように見えるが、かなり厳しい社会介入を継続している。地域での移動はできるだけ制限し、クラスターが発生しそうな場所も閉鎖が継続されている。

シンガポールは、個人の行動をスマホを使って記録することを推奨している。発症した場合には、過去を振り返って近くで接触した人に連絡ができるようなアプリが導入されている。このように、経済をできるだけ回しながら、感染拡大は最小限にする国こそが生き残れる時代である。感染拡大が確認されたらすぐにまた行動制限をするということを繰り返しながら、医療への負担を最小限にして、ウイルスと共存することになる。

中長期的に厳しい状況が続くが、前向きに、新しい世界に慣れていかなければならない。

※本記事は4月14日に執筆しました。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症 ]

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