医療費用の計算方法を提示し、具体的な整形外科試案2例を挙げて解説します。新しい処置や手術、検査などを診療報酬点数として要望する際の参考にしていただけたら幸甚です。
試案作成は以下の費用を手術、処置、検査、麻酔、内視鏡の項目ごとに計算して出来上がっています。
①人件費:施行医師は国家公務員医療職俸給表に基づき、俸給、扶養手当、地域手当、賞与、厚生費、退職金なども含めた時間給を計算します。ちなみに初任医師1年目の時給は約6570円です。また作業に必要な助手医師と看護師の時給や人数、検査等で必要な技術者の人件費も足されます。
②技術度:処置や手術等の種類によって、A研修医、Bレジデント、Cチーフレジデント、D専門医(9年目以降)、E指導医(12年目以降)に分けられて計算されています。
③医療材料:処置、手術等に必要な材料費をその項目ごとに計算します。
④処置室コスト:診察室での処置から手術室での行為は、時間当たりの施設コストはレベルAからDで、これを時間給として計算します。単純にかかった時間ではなく、処置や手術等に独占する時間にて計算します。外保連試案に載っている中から2例を示します。
1)関節注射:2020年度診療報酬コードG010 点数=80点
2020年度版外保連試案:関節注射(単純)
技術度B、術者医師1名、時間3分、看護師1名、時間10分〈人件費合計1455円〉
使用処置室B、時間10分、注射針1本、ガーゼ3枚【総費用合計:1820円】
2)人工膝関節全置換術:2020年度診療報酬コードK082-1 点数=376900点
2020年度版外保連試案:人工関節置換術・膝
技術度D、外科医師4名、協力看護師2名、時間合計2.5時間〈人件費合計45万9000円〉
基本セット(材料費)4万6380円【総費用合計:50万5380円】(人件費+償還されない費用)
試案は先輩方の長年のご努力で、非常に緻密かつ理論的な計算からできています。気になるのはその点数と診療報酬点数との齟齬が大きいこと、またその試案に感染性医療廃棄物の処置コスト計算が入っていない点があります。
三宅信昌(三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会副理事長)[診療報酬点数]