株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「病院看護に行き詰まったら、地域で看護を実践しよう」中村悦子

No.5009 (2020年04月25日発行) P.65

中村悦子 (社会福祉法人弘和会「訪問看護ステーションみなぎ」管理者)

登録日: 2020-04-28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最近の「みんなの保健室わじま」は、地域住民だけではなく、病院看護師が相談に訪れることも多くなりました。「仕事にやりがいを見いだせない」「地域で保健室をやってみたい」。そんな相談がある中で、先日は5年目に入った看護師から相談がありました。

彼は地元に一つしかない公立病院の急性期病棟の看護師ですが、こんな悩みを抱えていました。「入院時にかかわって受け持ちになった患者さんが、病状が安定すると地域包括ケア病棟に転棟するため、その患者さんがどうなって退院に至ったかを見届けることができない。そして、いつか月日が経ち、再び急性期病棟に入院してくる。それを繰り返して、結果的に施設入所となる。そんな流れが当たり前になってくると仕事のモチベーションが上がらない。たまに大病院に就職した同期と話をしていても遅れを取っている気がしてならない。就学の義務年限が終わると辞めていく看護師も多くなっている。自分はこのままここにいてもいいのだろうか。気持ちが焦って仕方ないです」

彼は地域医療支援看護師等就学資金制度を利用して看護師になりました。これは奨学金を受けた年数と同じ期間、指定の医療機関に従事することで奨学金の返済が不要となる制度であり、卒業と同時に地元の病院に就職しました。そして、このまま定年まで同じ病院に勤務していてもいいのだろうかという不安を抱えているようでした。

確かに昔に比べて地域の病院の離職率は高くなっています。 過疎地の看護師不足は病院以外でも解決されぬままの状況です。病院看護に魅力を感じなくなった若い看護師たちが地域に目を向けてコミュニティナースを目指してくれないかなと思います。在院日数がどんどん短縮されて、病院では密度の濃い生活指導もままならぬ状況であることは退院患者さんを看れば明らかです。治療が終わったら速やかに帰宅して、住み慣れた環境で体調を整えていく仕組みをつくりたいものです。

中村悦子(社会福祉法人弘和会「訪問看護ステーションみなぎ」管理者)[みんなの保健室わじま][コミュニティナース]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top