No.5010 (2020年05月02日発行) P.67
工藤弘志 (順心病院サイバーナイフセンターセンター長)
登録日: 2020-05-05
最終更新日: 2020-04-27
雑感②(No.5000)で医師の保険診療に対する不安について述べましたが、それは私自身のことでもありました。私の卒業した1980年頃のことを述べます。
同年3月だったと思いますが、卒業式の時、同僚が「何だかおかしい制度だよな。大学で、医学部の卒業試験に合格し、文部省(当時)が医者になっていいといっているのに、卒業後、今度は厚生省(当時)が医師国家試験をするなんて。厚生省は文部省のことを信用していないのか」と言っているのを聞き、なるほどその通りだと同感したのを覚えています。 大学の6年間は国公立、私立を問わず、文部科学省の管轄ですので、医学の学習を目的とし、実践します。卒後は、厚生労働省による医師国家試験が行われます。
私の場合、国家試験が終わり、脳外科の医局に出入りしていましたが、国家試験に合格すると事務方から呼ばれ、小さな黄色い紙きれを渡され、「これ、保険医登録票です。大事なものですからなくさないでください」と言われたのみでした。私には何のことだかわかりませんでした。他の府県に行った時にはまた新たに手続きをしてくださいなどとは一言も言われず、医師免許さえあれば、それで十分なのではと思っていました。
考えてみれば、おかしなことだと思います。繰り返すようですが、学生時代には医学のみで、保険診療の保の字も習いませんでした。当時の医師国家試験には公衆衛生の問題は出たように記憶していますが、保険診療の問題はなかったと思います。それが、国家試験に合格した途端、保険医になり、保険医療機関で働くことになるのです。保険診療には様々な決まり事があり、それを遵守しなければならないのに、それを全く知らずに。
工藤弘志(順心病院サイバーナイフセンターセンター長)[保険診療雑感④]