No.5019 (2020年07月04日発行) P.64
中川 聡 (国立成育医療研究センター集中治療科診療部長)
登録日: 2020-06-19
最終更新日: 2020-06-19
敗血症は、感染症に伴う宿主の生体反応の統御不全により臓器障害を呈する状態と定義される(sepsis-3)。一般に発熱があれば感染症を疑うが、老人などでは低体温を呈することもある。一方、敗血症の臓器不全の症状の多くは非特異的であり、症状から敗血症を推察することは時に困難である。sepsis-3の定義の登場に伴い、qSOFAという簡便なスコアが登場した。①呼吸数22回/分以上、②収縮期血圧100mmHg以下、③意識変容─の3項目のうちの2項目が当てはまれば、敗血症の可能性が高いというものである。これは簡便かつ魅力的であり、早くも医療現場に浸透している。
敗血症患者に特化したものではなく、重症患者を早期に見つけようというアプローチもある。早期警告スコア(early warning score)がそれであり、英国では、全国共通のnational early warning score(NEWS)が導入されている。これは、①呼吸数、②酸素飽和度、③酸素投与の有無、④体温、⑤収縮期血圧、⑥心拍数、⑦意識レベル─の7項目で評価するものである。各項目0〜3点の配点(酸素投与のみ0または2点)で、3点の項目は赤信号となり、次のシステム(rapid response systemなど)への通告基準となる。総合点で5点以上でも、次のシステムへの通告へとつながる。これらを用いることにより、心筋梗塞や急性呼吸不全といった重症疾患に加えて、敗血症の患者も拾い上げられることが示されている。例えば、呼吸数が25回/分以上であれば3点で赤信号となる。また、収縮期血圧が90mmHg以下であれば3点となり、こちらも赤信号である。意識の変容も3点を得る。すなわち、敗血症を考えるのにqSOFAは2項目陽性を必要とするのに対して、NEWSでは1項目でも赤信号が出れば、敗血症を含む重症な病態を考慮することになる。
NEWSの採点は、英国では病棟管理のルーチンとなっている。また、一般医家から二次医療機関への紹介の際に、NEWSの点数の記載を行うこともある。この紹介の際にNEWSの点数が高ければ、二次医療機関での診察までの時間が短くなることも示されている。
敗血症に焦点を当てるスクリーニング方法以外に、重症患者を早く拾い上げて高次診療に結び付ける仕組みも重要であり、その仕組みでも敗血症患者は拾い上げられると考えている。
中川 聡(国立成育医療研究センター集中治療科診療部長)[敗血症の最新トピックス⑤]