No.5031 (2020年09月26日発行) P.59
東 憲太郎 (公益社団法人全国老人保健施設協会会長)
登録日: 2020-09-08
最終更新日: 2020-09-08
医療の分野における第三者評価は「病院機能評価」として既に現場で定着している。その歴史は古く、1976年日本医師会内の病院委員会で病院機能評価の手法について検討を開始したのが始まりである。1985年に病院機能評価研究会が設置され、1995年財団法人日本医療機能評価機構が発足、1997年より本審査が開始された。既に25年近い歴史があり、2020年8月の認定病院累計は2150となっている。
一方介護の分野ではこのような本格的な第三者評価は行われておらず、福祉サービスの第三者評価を一部の介護サービス事業所が受けているにすぎない(グループホームには定期的な外部評価が義務付けられている)。
そもそも第三者評価とは、これを受けることにより、病院や施設の質の改善を図ることが目的とされている。しかし患者や利用者にとっては、第三者評価を受けていること、かつその評価結果が、受診や利用の選択における有用な情報となりえる。そう考えると、介護保険制度が始まって20年、そろそろ介護の分野においても、それなりの第三者評価の仕組みが構築されるべきかもしれない。
ただそれにはいくつか問題があるのも確かである。まず、介護は医療に比べ圧倒的に歴史が浅く、介護の技術や知識に関してエビデンスの蓄積が少ない。また、老健施設、介護医療院、特養それぞれに役割も違えば、提供しているサービスも異っている。従って介護保険の施設サービス3類型だけをとっても、共通の第三者評価指標を作るのは困難と思われる。さらに、各類型の役割に応じて、介護報酬上の評価もなされている。特に老健施設は2018年度の報酬改定により、その機能に応じて、「超強化型」から「その他型」まで、基本報酬が5段階に区分けされている。
従って今後介護分野に第三者評価を取り入れるとするならば、より本質的な「尊厳を重視したケア」「認知症への対応」「多職種連携の程度」「感染症や災害等に幅広く対応したリスクマネジメント」等で評価を行うべきであろう。病院機能評価とは全く別の視点で取り組む必要がある。
東 憲太郎(公益社団法人全国老人保健施設協会会長)[医療と介護の連携③]