著者は1957年東北大農学部卒業後、三共(株)入社。米アルバート・アインシュタイン医大留学中の研究を基に、帰国後、青かびからコンパクチンの精製に成功する。日本国際賞、ラスカー賞等受賞多数。農学博士、東京農工大名誉教授。
遠藤 章 著(岩波科学ライブラリー123,岩波書店,2006年刊)
近年、冠動脈疾患(CHD)をはじめとする動脈硬化性疾患は増加し続け、世界の死因のトップであり、わが国でも主要な死因の約30%に達する。特に、家族性高コレステロール血症(FH)は食事療法のみでは不十分であり、男性のFH患者では30歳代からCHDで亡くなり始めるため、診断された時点で予後のカウントダウンが始まる難病の1つであった。
FH治療の障壁に風穴を開けたのは、1973年に遠藤章先生らが世界で初めて開発した「コンパクチン」である。本薬剤の開発以降、様々なスタチンが開発と進化を遂げ、その後LDL-C低下作用に加え、多面的薬理作用(pleiotropic effect)という血管保護効果により、CHDのみならず脳梗塞の発症予防にも有効であることが明らかにされた。その結果、スタチンは全世界で少なくとも3000万人以上が服用する、「ペニシリンと並ぶ奇跡の薬」として人類の生命予後を飛躍的に改善したことは周知の通りである。
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