道路交通法が改正され、今月(2024年11月1日)より、自転車運転中の携帯電話使用と酒気帯び運転に関する罰則が定められました。以前に本欄(第61回、No.5161)で、2023年4月1日よりすべての自転車乗員に対してヘルメットの着用が義務づけられることをご紹介しました。これは事故による頭部外傷の予防が目的で、既に諸外国でも導入されている内容です。法律制定前には13歳未満の子どもにヘルメット着用が義務づけられていましたが、全年齢に適用されるようになりました。
改正前の2022年におけるヘルメット着用率は9.9%でしたが、法律が改正された翌年には13.5%に上昇しました。しかし、まだまだ低いのが現状です。2016年に自転車関連の交通事故件数は9万836件で、死者数が509人でした。2023年には、事故件数が7万2339件、死者数が346人と減少しているものの、全交通事故に占める自転車関連事故の割合は、この7年間で18.2%から23.5%と上昇し続けてきました。
そこで、いっそうの事故予防対策が求められることとなりました。
第一に、携帯電話使用等の禁止についてです。自転車運転中に手で携帯電話等を保持し、通話や画面を注視した場合、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。さらに、交通事故を発生させるなど、交通の危険を生じさせた場合には1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。日頃、携帯電話を触りながら自転車に乗っている人を多く見かけますが、すべて取り締まりの対象になります。
次に、酒気帯び運転についてです。酒気帯び運転の場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。これまで罰則はありませんでしたが、厳しい罰則が科せられるようになりました。さらに、酒気帯び運転の幇助行為についてです。酒気を帯びた人に対して自転車を提供した場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。これは、前記の酒気帯び運転と同じ罰則になります。さらに、同乗した人や酒類を提供した人に対しても、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
酒気帯び運転へのこれらの対応は、四輪自動車の運転者とほぼ同様です。社会全体で飲酒運転を予防しようとする厳しい法律になりました。
自転車は車道を走行することになっていますが、歩行者との衝突事故が問題になっています。近年の自転車対歩行者事故では、自転車運転者の年齢は10歳代が35.2%と最も高く、20歳代が16.2%と続き、両者で半数以上を占めます。なお、19.4%で高校生が当事者でした。若い人の中には、日頃からの習慣で自転車運転中に携帯電話を操作したり、自転車で酒を飲みに行く人もいるでしょう。しかし、相手を死傷させる危険性を認知するとともに、新たな罰則で厳しく処罰されることを理解して頂きたいと思います。
自転車で来院される患者さんには、ぜひとも情報提供をお願いします。