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【識者の眼】「ワクチン後進国の悪名を払拭できるのは医者だ」岩田健太郎

No.5050 (2021年02月06日発行) P.69

岩田健太郎 (神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)

登録日: 2021-01-26

最終更新日: 2021-01-26

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「くつ王」の異名を持ちお茶の間でもおなじみになった感染症医の忽那賢志先生が新型コロナのワクチンを下記サイトで簡潔明瞭にまとめている。ぜひご覧いただきたい。

[https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210120-00217893/]

ワクチンは、現段階で最も期待できる「ゲームチェンジャー」候補、ナンバーワンである。で、大事なのは医療者の接種率である。国の計画によると、まずは医療従事者がこのワクチンを接種し、順次、高齢者や基礎疾患を有する者へと接種の推奨が移行していく。

しかし、医療従事者の接種率ががっかりな低さになったらどうだろう。医療の専門職が打たないワクチンを、一般の国民が接種しようと思うだろうか。繰り返す。医療者のワクチン接種率は極めて重要なのだ。

そして、その時に最も重要なのは、我々医者の接種率だ。看護師、検査技師など、他の医療職でワクチンの十分な知識を持っている者は非常に少ない。彼らはワクチンの安全性に大きな不安を抱えている。「岩田先生、先生はコロナのワクチン打ちますかー?」とあちこちから質問されるのは、そのためだ。

もちろん、ぼくは接種を受ける。理由は忽那先生の文章を読めば分かる。多くの医者が接種すれば他の医療者たちも「それじゃ」とついてくるだろう。それは国全体の接種率にもろに、貢献する。

米国はワクチン先進国で、予防接種の「システム」整備はとても上手、かつ科学的だ。ところが、トップのレベルは最高なこの国で、現場レベルの「実態」は案外お粗末だ。最近のアンケートでも、米国の医療者でコロナワクチンを接種したいと希望しているのは全体の3分の1に留まった1)。米国にはこういう光と影がある。

トップのレベルが極めつけに低い日本だが、現場レベルはけっこうよかったりする。ワクチン接種率を高めて、感染制圧の一助としたい。そのためには先生方一人ひとりのご協力が大事である。ぜひ。

【文献】

1)Shekhar R, et al:medRxiv. 2021 Jan 7. [https://doi.org/10.1101/2021.01.03.21249184]

岩田健太郎(神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)[新型コロナウイルス感染症]

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