小林化工(福井県あわら市)が製造販売する抗真菌剤イトラコナゾールのジェネリック医薬品(後発医薬品)に睡眠導入剤が混入する事案が発生した問題で、福井県は同社に対し、医薬品医療機器等法に基づき116日間の業務停止命令などの行政処分を2月9日付で実施した。国の承認と異なる方法で血漿分画製剤を製造していた化学及血清療法研究所に対する110日間の業務停止処分(2016年)を上回る過去最長の処分となる。
睡眠導入剤が混入する事案が起きたのは、小林化工が製造販売しMeiji Seikaファルマと販売提携している経口抗真菌剤「イトラコナゾール錠50「MEEK」」。
福井県、PMDA(医薬品医療機器総合機構)とともに立入検査を行った厚労省によると、イトラコナゾール錠の製造工程で本来使用するはずの原薬とベンゾジアゼピン系睡眠剤(リルマザホン塩酸塩水和物)の原薬を取り違えて継ぎ足すミスが発生。さらに、品質試験で異常データが検出されたにもかかわらず原因究明を実施しないまま出荷され、処方・調剤された患者の多くに健康被害が生じる事態となった。
睡眠導入剤が混入されたロットは全国237施設の医療機関・薬局に納入され、2月1日時点で221人から、ふらつき、めまい、意識消失、強い眠気、これらに伴う自動車事故や転倒(交通事故22人、救急搬送・入院41人)などの健康被害が報告。因果関係は不明だが、2人の死亡事例も報告されている。
イトラコナゾール錠以外の医薬品でも小林化工は、①承認内容と異なる医薬品の製造、②二重帳簿の作成、③品質試験結果の捏造─などの法令違反行為を長年にわたり行ってきたことが確認されており、福井県は業務停止処分と併せて業務改善命令も同社に通達。厚労省は、116日間の業務停止期間が経過した後も「業務改善が完了しない限り出荷再開はできない」としている。
行政処分を受け、厚労省は9日付の通知で、医薬品製造所への「無通告立入検査」の実施強化を都道府県などに要請。
業界団体である日本ジェネリック製薬協会(会長:澤井光郎沢井製薬会長)は9日、「医薬品に対する信頼を揺るがし、協会の信用を失墜させた」などを理由に小林化工の「除名」を決定した。
同協会は「会員会社からこのような事態を二度と発生させないよう、ジェネリック医薬品の適正な製造管理と品質管理の徹底、コンプライアンスの徹底などを図り、ジェネリック医薬品の信頼回復を図っていく」としている。