No.5060 (2021年04月17日発行) P.66
山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)
登録日: 2021-03-19
最終更新日: 2021-03-19
多忙で気が休まらない、集中力が続かないことは誰にでもある。その際に役立つのがマインドフルネスである。これは今の自分の状態に意識を向けて心を整える技法のことで、評価や判断を加えずに受け止め、味わい、手放すこととされている。うつ病の再発防止や痛みの管理等に医療分野でも有効性が認められている。
マインドフルネスを行う際のポイントとしては、まず、「自分は今、何を感じているのか」と自分から一歩離れて思考や感覚を観察することである。湧いてきた感情に評価はしない。例えば怒りの感情が湧いた時、「こんなことで怒るなんて」と評価せずただ「怒っているんだな」と今の感覚を受け止めるだけにする。
そして、一つ一つの体験を大事にする。例えばだるさを感じたら、「大したことではない」と評価せずに、どの辺りがどのようにだるいのか、さらに観察を進めてみる。また、ネガティブな体験は早く忘れたいものだが、無理に消そうとはせず、自然に消え去るのを待つ。
日常的にマインドフルネスを実行することで自己理解が深まる。そして、自分を大切にできるようになる。
自分で簡単にできるマインドフルネス実践法をご紹介する。
①あなたは今、河原に1人でいて目の前にある川を眺めているという状況である。川の流れはゆったりとしていて、そこには緑の葉っぱが一枚、少ししてまた一枚と決して早くないペースで流れていることを想像してみよう。
②川の流れるイメージを維持しながら、注意を少しだけ自分に向けていく。自分の中に湧いてきた考えや思い、感情をキャッチしてからその考えを葉っぱにそっと載せる。そしてまた湧いてきた考えや感情をキャッチして、再びその考えを葉っぱの上に載せて流すという作業を繰り返す。
例えば「子供のころ、田舎の川でよく遊んだ」という考えが浮かんだらその考えを葉っぱに載せて流し、「昨日食べたカレーおいしかったな」という考えが浮かんだらまたそれも葉っぱに載せて流し、「このマインドフルネス面白いな」と思えばそれも葉っぱに載せて流す。マインドフルネスを習慣化することで、気持ちが安定する。ぜひ日常に取り入れていただきたい。
山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[マインドフルネス]