中央社会保険医療協議会は5月12日に開いた薬価専門部会で、2022年度薬価制度改革について関係業界から意見を聞いた。この中で日本製薬団体連合会(日薬連)は、イノベーションの推進には、特許期間中の新薬の薬価が適正な水準に維持され続ける仕組みの検討が必要だと主張。日本医薬品卸売業連合会(卸連)は、新型コロナウイルス感染症や相次ぐ後発医薬品の回収への対応でコストが急増しているとし、医薬品の流通コストの負担ルールの検討を求めた。
ヒアリングで日薬連は、全収載品目の約7割が改定対象となった21年度の中間年薬価改定について、「価格乖離の大きな品目を対象にする」としていた抜本改革の基本方針を大きく逸脱した内容だと不満を表明した。特に、特許期間中の新薬も改定対象になった点を問題視。結果として医薬品の薬価が想定を超えるスピードで循環的に下落することになったと指摘した。その上で、イノベーションの推進や医薬品の安定供給のためには、特許中の新薬の薬価水準が維持される仕組みが必要だとし、①特許期間中の新薬を中間年改定の対象にしない、②新薬創出等加算の対象範囲の見直し、③市場拡大再算定ルールの見直し―などを具体策に挙げた。
②では、効能追加のように、薬価収載後に認められた革新性・有用性に基づいて、新薬創出等加算の適否を改めて判断する仕組みづくりを要望。③では、効能追加が実質的に、再算定による薬価引き下げのリスク要因となっている現在のルール運用を改め、「個々の効能追加の状況等を十分に考慮した上で慎重に判断すべきだ」と述べた。
卸連は、新型コロナウイルス感染症や毎年薬価改定の影響による売上低下と、後発医薬品の回収や原材料不足による欠品への対応に伴うコストの増大で、医薬品卸の営業利益は激減し、このままでは医薬品の安定供給に支障を来たす恐れがあると窮状を訴えた。このため、次期薬価制度改革に向けた議論では、医薬品の流通コストをどのようなルールで負担するのか、改めて議論する必要があるとの認識を示した。