株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「日本の新型コロナウイルス対策は本当のところどうなのか─米国人にも聞いてみた」佐藤敏信

No.5067 (2021年06月05日発行) P.60

佐藤敏信 (久留米大学特命教授、元厚生労働省健康局長)

登録日: 2021-05-26

最終更新日: 2021-05-31

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新型コロナウイルスのワクチンの確保と接種も、ここにきてある程度の見通しが立ったようだ。昨年のダイヤモンド・プリンセス号の騒ぎから考えると、実に長い道のりであった。

さて今回の新型コロナ禍で、気になったことの一つは、マスコミのこの問題に対する報道姿勢と内容である。過去の記事をあらためて読み返したが、経済評論家や社会学者を中心に、「日本のコロナ対策は大失敗」との論調である。そして今年に入ると「ワクチン敗戦国」という言葉が出てきた。果たしてそうなのか。

そしてもう一つは「医療崩壊」という言葉である。急性期病床のひっ迫と対応を指しているようだ。一部のマスコミや識者からは、世界的に見ても人口当たりの病床数が相対的に多い日本で「なぜ病床が不足するのか?」との疑問の声が上がった。「病床が足りないなら増やせばいい」「人工呼吸器が足りなければ増産したら」といった意見も出た。私自身も、なぜそういう状況になっているのかについては臨床の現場にいるわけではないので、明確なデータを持ち合わせておらず、想像の範囲でしかなかった。

そんな中で、そもそも米国と比べてどうなんだ、という気になってきた。言うまでもなく米国の人口当たりの医師数はそれほど多くはない。また医療費は診療行為にもよるが、総じて日本の10倍かそれ以上だ。例えば、ECMOを装着すると、日本の診療報酬においてさえ、〔K601 人工心肺(1日につき)〕で初日3万150点、2日目以降3000点、つまり3万円だ。米国は日本の50倍、100倍の患者数だったはずだし、重症者もそれくらいはいたはずだ。そうなると、費用の問題も含めて米国では日本で騒がれるような医療崩壊はないのかとの疑問が沸いてきた。要するに肺炎を惹起し、呼吸管理を必要とするような重症の患者さんに対して、適時適切に診療が行われ、その莫大な費用についても何らかの形で賄われたのかどうかということである。そういう視点で日本の報道を読み返すと、こうした日米の医療のそもそもの違いや実態を踏まえた記事はほとんど「ない」ということに気が付いた。

そこで、在東京の米国人に、米国の実態から見た日本のコロナ対策について聞いてみることにした。彼の名前はNeil Rosenblatt。驚くべき調査力で、あっという間にいろんなことを教えてくれた。次回以降、その話をする。

佐藤敏信(久留米大学特命教授、元厚生労働省健康局長)[新型コロナウイルス感染症]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top