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【識者の眼】「微生物の薬剤耐性と敗血症」松嶋麻子

No.5076 (2021年08月07日発行) P.62

松嶋麻子 (名古屋市立大学大学院医学研究科先進急性期医療学教授、日本敗血症連盟)

登録日: 2021-07-21

最終更新日: 2021-07-21

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックはオリンピック・パラリンピックの開催を揺るがす程、日本国内外で大きな問題となっていますが、このパンデミックより前から、世界中で微生物の薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)が大きな課題となっていました。AMRを獲得した微生物は、既存の抗微生物薬が効かないため、それらに感染した場合に有効な治療薬がない、という事態になります。特に免疫力が低下した高齢者や小児、基礎疾患をもつ人では重篤化しやすく、治療薬の効かないAMR微生物に感染した場合は容易に敗血症に陥り、命に関わります。

このような世界的脅威について「2050年にはAMR関連の死亡者数はがんによる死亡者数を上回り、世界で最多の死亡原因になる」という推定結果が出され大きな衝撃が走りました(2014年12月 http://amr.ncgm.go.jp/medics/2-4.html)。世界保健機構(WHO)は2011年より“No action today, no cure tomorrow”としてAMRを世界中で取り組むべき問題として取り上げていましたが、このような推定結果を受けて2015年にはAMRに対する具体的な「グローバル・アクション・プラン」を採択しました。この「グローバル・アクション・プラン」は同年のG7エルマウ・サミット、2016年のG7伊勢志摩サミットにおいて、G7諸国で協調して取り組む国際課題として確認されました。日本でも2016年に厚生労働省からAMR対策アクションプランが出され、このプランに沿った対策が行われています(http://amr.ncgm.go.jp/)。

【日本のAMR対策アクションプラン
1. 普及啓発・教育:薬剤耐性に関する知識や理解を深め、専門職等への教育・研修を推進
2. 動向調査・監視:薬剤耐性および抗微生物剤の使用量を継続的に監視し、薬剤耐性の変化や拡大の予兆を適確に把握
3. 感染予防・管理:適切な感染予防・管理の実践により、薬剤耐性微生物の拡大を阻止
4. 抗微生物剤の適正使用:医療、畜水産等の分野における抗微生物剤の適正な使用を推進
5. 研究開発・創薬:薬剤耐性の研究や、薬剤耐性微生物に対する予防・診断・治療手段を確保するための研究開発を推進
6. 国際協力:国際的視野で多分野と協働し、薬剤耐性対策を推進

松嶋麻子(名古屋市立大学大学院医学研究科先進急性期医療学教授、日本敗血症連盟)[敗血症の最新トピックス

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