2015年6月,浜松市で行われた日本ジェネリック医薬品学会第9回学術大会で,循環器の専門医に「高血圧治療ガイドラインには,なぜジェネリック医薬品が掲載されていないのか」と質問したところ,次のような回答が返ってきた。「ジェネリック医薬品はランダム化比較試験による臨床試験を行っていないので,有効性,安全性のエビデンスがないからだ。エビデンスのない医薬品をガイドラインに掲載することはできない」。
現在,特許切れの医薬品におけるジェネリック医薬品のシェア率(品目ベース)は50%近くである。その専門医の言うことが正しいとすれば,エビデンスのないジェネリック医薬品を厚生労働省は承認し,国民はそれを服用しているということになる。経済財政諮問会議でも,エビデンスのないジェネリック医薬品のシェア率を,2020年までに80%以上にすることを目標にしていることになる。ジェネリック医薬品に関してエビデンスがないとすることは本当に妥当と言えるのだろうか。
実は,米国では1980年代の中頃にこのような議論が盛んに行われていた。1980年代の前半には,米国においてもジェネリック医薬品の承認にあたっては臨床試験が課せられていた。先発医薬品と有効成分が同じであることからジェネリック医薬品の臨床試験が省かれ,現在のような簡略承認の道が開かれたのは,1984年になってからのことである。
この年,ジェネリック医薬品の簡略承認と新薬の特許期間の延長を抱き合わせた法律が米国議会で通過する。それが「ハッチ・ワックスマン法」で,法案を提出した2人の上院議員の名前が冠せられている。この法律によって現在のジェネリック医薬品の普及の道筋が開かれ,現在の米国でのジェネリック医薬品市場シェア90%という時代につながる。そして,このジェネリック医薬品の承認方式は今や世界標準になっている。
しかし当初,こうした簡略試験で承認されたジェネリック医薬品に関する臨床的同等性についての議論が巻き起こっていた。論争は議会に及び,大論争となったくらいである。こうした中で,米国ではジェネリック医薬品の製造販売後に先発医薬品との臨床的同等性を検証する論文が次々と発表された。そのような論文の1つを次に紹介しよう。
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