編著者: | 宮田靖志(愛知医科大学医学部地域医療教育学寄附講座教授) |
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編著者: | 矢吹 拓(独立行政法人国立病院機構栃木医療センター内科医長) |
判型: | A5判 |
頁数: | 320頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2017年04月26日 |
ISBN: | 978-4-7849-4600-6 |
版数: | - |
付録: | - |
ポリファーマシー対策の必要性はすでに多く説かれています。薬のエビデンスに基づく不適切処方の回避や減薬に焦点をあてた「医学的に正しい科学的アプローチ」は欠かせません。しかし、それだけではうまくいかないことを、多くの先生はすでに経験しているのではないでしょうか?
それを解消すべく、本書は「意味のある科学的根拠」はもちろんのこと「患者さんの価値観」を重要視し、医師と患者さんの間での意思決定をどのように共有していくかを含めて、ポリファーマシー対策に迫っております!
患者さんの価値観をくみ取った上での薬の利益と不利益のバランスとは?患者さんを取り巻く様々な状況をどう調整する?多職種間でのポリファーマシー外来は?実際によくある処方は?止めにくい薬は?明日からすぐに使えるポリファーマシー対策の秘策が詰まった1冊です!
●1章 ポリファーマシー概論
●2章 よくある処方/止めにくい薬
スタチンを含む脂質異常症治療薬
便秘薬
サプリメント
頻尿治療薬
ベンゾジアゼピン系薬および新規睡眠薬
非定型抗精神病薬
鎮痛薬
コリンエステラーゼ阻害薬
プロトンポンプ阻害薬
降圧薬
●3章 ポリファーマシー症例への実際のアプローチ
その浮腫,どこから?
この咳を止めるのは,あなた。
とりあえずクスリを飲めば大丈夫!?へき地診療所でのポリファーマシー対策
もう一度,自分の畑が見たい-末期癌患者を住みなれた自宅へ帰すために薬剤調整した症例
離島におけるポリファーマシー-木も見て森も見ることの重要性
ステロイドとST合剤
ポリファーマシー介入するタイミングを逃さない
患者が本当に望んでいることは何か
急性期病院におけるポリファーマシー
●4章 薬剤師の視点から
在宅訪問して初めてわかること
調剤薬局のカウンターにて-医師と患者の間で垣間見えること
患者や家族の想いや願いを汲み取った-医師と薬剤師の処方連携
お薬手帳の使い方
●5章 ポリファーマシー外来の実践
多職種チームで取り組むポリファーマシー外来
この2,3年で実に多くのポリファーマシー対策本が出版されてきましたが,ここにさらに1冊,本書が追加されることになりました。後塵を拝した感のある(?)本書ですので,もちろん,これまでの書籍とは一味違ったものをお届けしたいと思います。
これまでのポリファーマシー対策は,薬のエビデンスに基づく不適切処方の回避や減薬のみに焦点が当てられることが多かったように思います。もちろん,このような医学的に正しい科学的なアプローチは,ポリファーマシー対策には欠かすことのできないものです。しかしながら,実際の臨床現場では,このような医学的に正しいアプローチのみを前面に押し出しただけのポリファーマシー対策ではうまくいかないことを,多くの臨床家は経験しています。医学的に正しい方法が奏功して適切な処方に整理された,と診察室や薬局のカウンターで臨床家は思っていても,実際には患者さんの自宅での毎日の服薬状況は以前と変わっていない,ということはしばしば経験されます。知らぬは医療関係者のみ……特に医師は……ということでしょうか。残念ながら,多くのポリファーマシー対策が思ったような効果が得られないままになっていることが,現実に起きています。
本書は,臨床の最前線で毎日,真摯に患者さんと向き合い,患者さんにとって最善の医療を提供しようと日々悩みながらポリファーマシー対策に取り組んでいる,真の臨床家の医師,薬剤師の先生方が執筆を担当しています。自身のポリファーマシー対策の経験から,真の効果をあげるためのエッセンスが散りばめられています。患者さんに本当に役立つ薬のエビデンスは何なのか,患者さんの価値観を十分にくみ取った上での薬の利益と不利益のバランスをどうするのか,実際に薬を整理するときに考慮すべき患者さんを取り巻く状況をどう調整するのか,多職種が連携してポリファーマシー外来を行うには具体的にどうすればよいのか。本書に収められているポリファーマシー対策の秘訣は,どれもが明日からすぐに使えるものばかりです。
本書の底流に流れる哲学は,“常に患者さんを中心にし,意味のある科学的根拠と患者さんの価値観を重視し,関係者間での意思決定の共有を行い”ポリファーマシーに取り組むということです。これらの哲学はすべての医療の基盤となるものと言ってよいでしょう。本書でポリファーマシー対策の具体を学ばれた暁には,読者のみなさんが実践されるすべての日常臨床が新たな展開を見せることになるのではないかと思います。そのことを期待して本書を送り出したいと思います。ポリファーマシー対策をきっかけにすべての臨床現場が大きく変わることを夢見つつ,多くの方が本書を手に取ってくださることを楽しみにしています。
2017年春 雲一つない晴天の“住みよい街・長久手市”の研究室にて
愛知医科大学医学部地域医療教育学寄附講座教授 宮田靖志