株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「持続可能な医療ICTに重要な機能とは」土屋淳郎

No.5122 (2022年06月25日発行) P.58

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2022-06-02

最終更新日: 2022-06-02

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

5月14日に全国医療介護連携ネットワーク研究会Webセミナー「コロナ禍での地域包括ケアとICT・オンライン診療について」を開催した1)。大阪、秋田、東京(新宿)の先生方によるコロナの自宅療養患者対応や地域の在宅連携事例について講演をしていただき、非常に有意義なものであった。特にICTの利用に関する「今ある使えるシステムを組み合わせて利用する」「今までの地域包括ケアで築き上げていたシステムを有効利用し、今後はコロナ禍で利活用したシステムを地域包括ケアに組み入れていく」といった内容には、今後の医療ICTのあるべき姿のひとつが見えた感じであった。

その翌週から、読売新聞では「[コロナ警告]進まぬデジタル」として5回の連載が組まれていた。HER-SYSの入力項目が多いことが問題となっていること、入力が進まずFAX頼りの地域では代行入力に手間取っていること、Kintone(サイボウズ社)を利用し医師が入力しやすいシステムを利用している地域があること、My HER-SYSを利用した療養証明のこと、「COCOA」がつくって終わりの感が否めないことなど、様々な事例と“アラート”が記事となっており、非常に参考になった。

確かにHER-SYSは入力項目が多く、ワクチン接種歴など国が持つデータまで求められるため入力が負担になっている。この負担軽減対策として、Kintone利用の他にエクセルファイルを用いているケースもあるが、筆者は以前から利用しているWeb問診システム「SymView」の追加機能として最近リリースされた「HER-SYS連携機能」2)を使っている。これにより、患者情報・既往・症状などは再度入力し直す手間がなく、所見や検査結果などを追加入力することで円滑にHER-SYSの入力ができるようになる。

HER-SYSには課題もあると言われるが、こまめなバージョンアップにより、他システムからのデータインポート機能が搭載されたり、My HER-SYSによる患者・行政・医療機関の連携体制が構築されたりしており、今後の感染症対策におけるICT利用の中心的役割を持つ可能性があると考えている。

今後の医療ICTのあるべき姿、つまり「持続可能な医療ICT」を考えた時、「人にやさしい/人とつながるシステム」や「状況や環境に応じて速やかに対応できる開発力」とともに、今ある使えるシステムを組み合わせて利用したり、新たなシステムを現状のシステムに組み込んだりできるように、いわゆる“囲い込み”や機種依存がない上での「他システムと連動できる機能」は最も重要なのではないだろうか。

【文献】

1)https://ikairen.net/web%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC

2)https://www.media-cf.co.jp/service/symview/column/her-sys/

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[HER-SYS

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top