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【識者の眼】「一生使える接種証明書アプリ」鈴木隆雄

No.5129 (2022年08月13日発行) P.62

鈴木隆雄 (Emergency Medical Centerシニア・メディカル・アドバイザー)

登録日: 2022-07-11

最終更新日: 2022-07-11

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コロナ禍ではワクチン接種証明書のデジタル化が話題となった。接種証明書の本来あるべき姿は、人の誕生から死まですべての接種記録を一生持ち続けること。現在の母子健康手帳の予防接種欄は、子どもが生後必要な予防接種を遅延なく受けるのが目的で、その後の予防接種まで記載するようにはなっていない。大人になると手帳を紛失していることもある。

仕事や留学で海外に赴くとき、種々感染症への予防接種証明が要求される。慌てて母子健康手帳を探し、英文証明を作成することとなる。見つからなければ、再度それらの接種が必要となる。外傷治療時に破傷風トキソイドを受けると、その接種証明書が発行される。その後新たなケガで病院を受診するとき、どれだけの人がその証明書を持参するだろうか。そもそも何枚もの接種証明書を束ねて一生持ち歩くのは不可能に近い。

そこで提案である。母子健康手帳は日本から世界へ広がった歴史がある。その栄光を背負い新しい母子健康手帳は、接種証明書の部分を分冊とし、一生継続して記載できるようにする。記載欄は日本語(母国語)と英語なり他の外国語併記とする。現在世界で通用している接種証明書は世界保健機関(WHO)が発行しているものだが、小さいことが欠点なので、日本が発行するものは誰もが見やすいパスホートサイズがよい。これらをデジタル化したアプリで世界に発信する。これなら、どの言語にも変換可能、証明書の印刷からインターネット転送も可能である。

紛争地などでの予防接種活動の問題点として、接種証明書の発行がある。戦線が動くと、その前後で政治形態も変われば、接種証明書の発行者も変わる。あるいは、避難民となって隣国に移動することもある。結果としてばらばらな情報しか集まらず、どの予防接種が未接種なのか不明のままとなる。提案した接種証明書アプリが世界標準となれば、WHOが各国に番号を割り当てれば、世界レベルで接種の重複もなくなる。

鈴木隆雄(Emergency Medical Centerシニア・メディカル・アドバイザー)[予防接種証明][母子健康手帳]

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