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【識者の眼】「総合診療科の多様性とフィールド展開」藤島清太郎

No.5129 (2022年08月13日発行) P.61

藤島清太郎 (慶應義塾大学医学部総合診療教育センター・センター長)

登録日: 2022-07-11

最終更新日: 2022-07-11

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総合診療科は、家庭医療、総合内科の要素を併せ持つ、わが国独自の専門診療科である。超高齢社会におけるジェネラリストへのニーズの高まりを受けて、先頃、新専門医制度下において基本領域診療科に認定され、専門研修も開始された。今後、地域の診療所・在宅医療施設・病院総合診療科など幅広いフィールドでの活躍が期待されている。総合診療科の歴史は長いが、基本領域に組み込まれてからが真価を問われるわけであり、今後早急に実績を積み上げ、存在価値を自ら示していく必要がある。

総合診療領域で最大の学会は日本プライマリ・ケア連合学会である。本年の学術大会では標記テーマでオンデマンド・シンポジウムを企画し、新型コロナウイルス感染症(COVD-19)患者診療に奮闘する総合診療医の取り組みを紹介した。

COVD-19パンデミックは、社会に潜む様々な問題点を顕在化した。医療分野においても、わが国では欧米諸国よりも感染レベルが一桁以上少ないにもかかわらず医療逼迫が起き、その要因として病院間の役割分担や連携が進まなかったこと、コロナ対応を行わない病院が少なくなかったこと、診療所が中心的な役割を果たさなかったこと、などが指摘されている〔小林慶一郎,草場鉄周,他:コロナ危機下の医療体制研究会提言③〜コロナ危機で露呈した我が国医療提供体制の課題克服に向けて〜.キャノングローバル戦略研究所,2021.4.16.(https://cigs.canon/article/20210416_5730.html)〕。

しかし、前述のシンポジウムで紹介したように、COVID-19患者の在宅診療や入院診療を積極的に担われてきた先生方も数多くいる。さらに、自宅療養者に対する救急往診などの新たな医療サービスも創出された。これらの新たなフィールド展開は、社会のニーズを的確にとらえ、進取果敢に取り組んだ結果であり、総合診療科が今後発展していく上で見習うべき点が多い。また、総合診療医学も、カバーするフィールド、状況で高質な総合的医療を提供できる医師の育成を第一義に体系化していくのが本筋であろう。

今回のパンデミックを契機に、かかりつけ医制度の議論が本格化している。本制度が導入される場合、契約に伴う診療義務が課される可能性もある。日本専門医機構の総合診療専門医検討委員会HPに掲載された委員長メッセージにもあるように、総合診療医には日常診療に加えて、非日常の災害医療〜感染症パンデミック対応も期待されていることを心しておく必要がある。

藤島清太郎(慶應義塾大学医学部総合診療教育センター・センター長)[かかりつけ医制度]

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