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【識者の眼】「無謬性にとらわれない見直しの重要性」小倉和也

小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2022-08-05

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行政改革推進会議から行政の無謬性神話からの脱却に向けての提言が出された。

現場とのコミュニケーションを密にし、適切にPDCAサイクルを回すことの重要性などが説かれている。コロナ対策とその後の地域共生社会へ向けての取り組みにとっても意義深い内容となっており、上記の観点と地方の感覚から2点重要と思われる点を指摘したい。

1つは、このような行政の意識期改革が中央省庁と地方行政の両方でしっかり浸透することの重要性である。提言では「地方自治体をはじめとする政策の現場(実施組織)とのタイムリーで緊密なコミュニケーション」の重要性が強調されているが、地方自治体が実施主体となる政策においても、残念ながら自治体の当事者意識は薄いこともある。多くの場合他の組織へ委託した時点で実施したものとされ、実態の把握やその後のPDCAも行われていないか形だけのことがしばしばみられるのが実情である。とはいえ、中央省庁としては地方自治体を通じて報告を受けるしかなく、地方自治体そのものの中でこの改革が進み、実際の当事者・現場の事情を把握した上で中央省庁と橋渡しできることが必須であろう。

もう1つは、無謬性にとらわれないタイムリーかつ適切な評価と修正が、コロナ対策のような短期的な政策だけでなく、長期的かつ根本的な政策についても十分に適用されることの必要性である。政策の評価と修正をデータやエビデンスに基づいて迅速に行うことが強調されているが、たとえば50年前に政策の柱とされた「日本型福祉社会」が現在までの止まることのない少子高齢化と社会経済の低迷の根源にあることを裏づけるエビデンスには事欠かないにもかかわらず、いまだに根本的な見直しはなされていない。無謬性神話の否定に聖域はあってはならないと同時に、政争のためでなく政策のために真摯な情報開示と国民全体での議論を行う文化の醸成も重要であると考える。

コロナ禍においては、この30年の日本社会の停滞で浮き彫りになった「変われない日本」の課題がさらに強調されたと感じている。この危機を克服し、希望の持てる地域共生社会を実現するためには、「迅速に変われる日本」への変革が急務である。

【参考】

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/cb5865d2-8031-4595-8930-8761fb6bbe10/8d01f72a/20220603_meeting_administrative_research_outline_11.pdf

小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[変われない日本]

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