株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「カルタヘナ法がウイルスベクターを使った医薬品の開発を阻害してるって、本当?(その2)第一種使用(開放系での使用)と第二種使用(閉鎖系での使用)とは」藤原康弘

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

登録日: 2022-08-06

最終更新日: 2022-08-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前回述べたようにカルタヘナ法の精神は、遺伝子組換え生物が環境へ悪影響を与えぬように管理することである。その管理手法の1つ目として、遺伝子組換え生物を特定のエリアから一切外に出さないように管理をするというものがある(閉鎖系)。当然、遺伝子組換え生物が外界に出なければ環境に悪影響はないだろう。カルタヘナ法ではこれを第二種使用と呼ぶ。医薬品の製造などはこの第二種使用として閉鎖された製造所で行われる。一方、ウイルスベクターを患者に投与した場合、投与後ベクターが体内から完全に消失するまでの間、患者を1つの場所に閉じ込めておくということは現実的ではない。そこで2つ目の管理手法として、一定量は環境中に出る可能性があっても、環境に悪影響が出ないレベルになるようにルールを定めましょうというものがある。これが開放系、カルタヘナ法では第一種使用と呼ぶ。たとえば、ウイルスベクターを投与した患者の尿から一定量ベクターが排出されるのであれば、この尿をどう取り扱うかのルールを決めるなど、環境へ悪影響を与えるリスクに対してルールを決めることで、患者自身はある程度自由に活動可能とするということである。臨床試験(含む治験)、診療(例:脊髄性筋萎縮症に対するゾルゲンスマ、新型コロナウイルスベクターワクチン)での使用はこの第一種使用にあたる。

第二種使用の申請は、大臣確認と呼ばれ、このような遺伝子組換え生物をこのような施設で閉じ込めて使いますよ、と大臣に申請し、各省庁での審査を経て最終的に大臣の確認済みの通知をもらうことになる。遺伝子組換え生物が漏れ出ないように管理されていれば良いので、遺伝子組換え生物の特性に合った施設であれば、確認事務に要する時間は長くない。一方、第一種使用の申請は、大臣承認と呼ばれ、「このような遺伝子組換え生物をこのようなルールで取り扱えば環境には悪影響ないと判断しています」、と大臣に申請し、各省庁での審査を経て適切と判断されたルールを厚生労働省の部会へ報告し大臣が承認する。日本全国で同じ大臣承認されたルールで対象となる遺伝子組換え生物を取り扱う必要があり、ルールは公開されている(https://www.biodic.go.jp/bch/lmo.html#iyakuBunya)。日本全国に影響を与えるルールを決めることもあって、申請施設のみで完結する第二種使用よりも第一種使用は論点も多く、審査には相対的に時間がかかることとなる。

■本シリーズ
(その1)カルタヘナ法とはどんなもの
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20165
(その2)第一種使用(開放系での使用)と第二種使用(閉鎖系での使用)とは
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20166
(その3)審査はどこで行っている
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20167
(その4)米国での開発の方が楽なんてことはありません
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20168
(その5)厚生労働省・PMDAの行ってきた運用改善
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20169

藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[生物の多様性に関する条約][遺伝子組換え生物

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top