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【識者の眼】「看護教育を傍からみて」島田和幸

No.5144 (2022年11月26日発行) P.60

島田和幸 (地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)

登録日: 2022-10-25

最終更新日: 2022-10-25

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リアリティショック、すなわち新入職員の戸惑い、自信の喪失は、医療界では特に新卒看護師の離職の原因ともなっている。確かに、「こわい、失敗するかも」と日々“びくびく”している新人看護師は、少なくないように思う。看護師が就職先を決めるにあたっては、教育が充実した病院を第一に選ぶという。このことは、卒前教育の達成度は即戦力に程遠いということの裏返しでもある。あくまで傍からみてのことだが、看護基礎教育に関して、日頃気になっていることがある。

私自身、いくつかの看護学校の非常勤講師として年に数コマの講義を依頼されて担当した経験がある。学校は、規定の教育課程を消化するために、講師陣をやり繰りすることに大変な労力を費やしているようにみえる。また、疾病に関する講義は、基本的には医学生に対する教科書を焼き直したものを教材にして、しかも極端に圧縮した時間内で済ませるものだから、学生は疾病のイメージすら摑めないままで終わるのではないかと危惧する。もっと、看護学生が知っておくべき事柄に絞って、一般人にもわかりやすい教材を用意するのがよいと思う。また、一般に看護学校や学部の教官は現役を離れた看護師である。そのために、臨床現場で看護を実践する人が主体的に学生を指導する体制にはなっていない。

翻って医師の場合はどうだろうか? 医学生の指導教官は、同時に病院の現役スタッフでもある。社会がどのような医師像を求めているかを議論しながら、卒前・卒後を通じた医師の教育および研修に対して、不断に改革が行われている。我々が経験した何十年も前の時代と比べ、卒前教育での達成度は比較にならないくらいレベルが上がっている。

地域包括ケアや医師の働き方改革などの実現に向けて、今や、医療・介護の領域での看護職の役割は多様化し、比重もどんどん増している。看護師の業務とされる「療養上の世話と診療の補助」も今日のチーム医療の観点から見直す必要がある。その中で、教育内容の増大に対応して看護基礎教育を4年制にすることが論じられている。看護師が備えるべき資質とそれをどのように獲得するかを考えたとき、教育課程の改革のみならず、それを誰がどのように教育するか、看護教育体制も含めた変革も必要ではないだろうか。

島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)[リアリティショック][看護基礎教育][4年制化]

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