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【識者の眼】「臨床研究①─臨床研究の質向上のために臨床研究中核病院の活用を」西﨑祐史

No.5142 (2022年11月12日発行) P.60

西﨑祐史 (順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)

登録日: 2022-10-26

最終更新日: 2022-10-26

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近年、わが国の臨床研究力の低下が指摘されている。臨床医学コア・クリニカルジャーナル採択数は低迷し、欧米諸国に引き離されている現状がある。研究力低下を挽回すべく、わが国の臨床研究を取り巻く環境は、著しく変化している。2015年4月には「日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)」が設立され、臨床研究の基盤整備が進み、医療研究の予算管理が一元化された。また、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う病院として「臨床研究中核病院」(以下、中核病院)が、医療法上に位置づけられ、2022年10月現在、国内14施設が承認されている1)

中核病院は、自らが安全で質の高い臨床研究を実践し、日本の研究をリードするのみならず、他の医療機関の臨床研究をサポートすることで、他の医療機関における臨床研究の質向上に貢献する。つまり、非臨床研究中核病院(以下、非中核病院)に所属する研究者は、積極的に中核病院の臨床研究支援部署を活用し、自身の研究のさらなる質向上をめざすことが望まれている。

そこで私達は、非中核病院の研究者が中核病院にどの程度研究支援を依頼しているのかを調査した。具体的には、2018年4月1日〜2019年5月31日の期間にjRCT(Japan Registry of Clinical Trials)に登録された860施設のデータを解析対象とし、臨床研究支援職種(研究・開発計画支援担当者、調整管理実務担当者、データマネージャー、モニター、監査員、生物統計家)単位で、支援依頼先を評価した。その結果、非中核病院が中核病院に研究支援を依頼した割合は、研究支援者が参加した研究のみを対象としてカウントすると、研究・開発計画支援担当者4.5%、調整管理実務担当者3.0%、データマネージャー1.6%、モニター0.8%、監査員1.8%、生物統計家8.2%と、すべての支援職種で10%未満であった。多くは、自施設の臨床研究支援部署、もしくは企業等の病院以外に支援依頼していることが分かった2)

上述した結果は、最新のデータに基づいた結果ではないが、まだまだ、中核病院の知名度は高くないと思われる。より質の高い臨床研究の実践をめざし、多くの研究者が、中核病院を積極的に活用することを願う。

【文献】

1)厚生労働省:臨床研究中核病院について.

   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/tyukaku.html 

2)Nishizaki Y, et al:Juntendo Med J. 2022;68(4):413-5.

西﨑祐史(順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)[臨床研究][臨床研究支援][総合診療]

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