厚生労働省は12月5日の社会保障審議会医療部会に、オンライン診療の場所の拡大について、具体案の骨子を提示した。医療資源の少ないへき地などが対象の限定的な措置として、公民館等の身近な場所にオンライン診療のための医師が常駐しない診療所の開設を認める。委員から反対意見は出なかった。部会は今後も検討を継続し、年度内を目処に一定の結論を出す考え。
オンライン診療の指針では、仕事の忙しさなどから医療機関から足が遠のきがちな現役世代の受診機会を確保する観点から、医療の提供場所として医療法で規定されている医療機関、老人保健施設など以外に、患者の職場でのオンライン診療受診を認めている。この取扱いを踏まえ、政府の「規制改革実施計画」(2022年6月7日閣議決定)は、デジタルデバイスに明るくない高齢者向けに、新たに公民館や通所介護事業所といった身近な場での受診を可能にするための検討を行うよう厚労省に求めていた。
これを受けて部会は今年8月の会合でこのテーマについて議論。その際、過疎地や中山間地域といった医療資源が少ない地域では医療の機会確保の有効な手段となり得るとの意見が多く示されたことから、厚労省は今回、対象地域をへき地に限定する形で骨子をまとめ、部会に提示した。
具体的には、へき地等において公民館や郵便局等の身近な場所にオンライン診療のための医師が常駐しない診療所を開設できるようにする。その上で、既存の巡回診療の特例の基準を参考に、▶オンライン診療が定期的に反覆継続(おおむね毎週2回以上)して行われることのないもの、または一定の地点において継続(おおむね3日以上)して行われることのないものであれば巡回診療の特例を適用し、巡回診療の実施計画の届出を行えば診療所の開設は不要とする、▶特例の基準を超える場合は、医師が常駐しない診療所の開設を届け出る―と取扱を整理した。医師常駐不要の診療所の具体的な設置場所などについて、都道府県の関与を求める考えも示した。