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【識者の眼】「どうする、大学病院改革」島田和幸

No.5185 (2023年09月09日発行) P.61

島田和幸 (地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)

登録日: 2023-09-01

最終更新日: 2023-08-31

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文部科学省が、大学医学部の研究力低下に対し、各大学に「大学病院改革」プランの策定を求めているという。ただでさえ臨床に追われて研究に費やす時間が大幅に減少しているのに、働き方改革によって、さらに研究が衰退することを恐れている。

大学病院は困惑気味である。国立大学は、国の交付金が減少し、「病院経営」に今まで以上に力を入れざるを得なくなり、研究よりも臨床に傾いていた。その矢先に、対極にある「学術研究」をなんとかしろと言われたのである。文科省の本来の役目からすれば、このような警鐘を鳴らすのは遅きに失したと言えなくもない。

しかし、ことはそう簡単ではない。医学分野における基礎、臨床、橋渡しの各領域、そして医学以外の分野との学際領域と、医学研究の幅は極めて広い。研究する体力が低下している状態で、今日的視点で、これらの研究体制をどう構築するか? 研究資金をどのように調達するか? 研究要員は足りているか? “失われた30年”は、ボディブローのように効いている。

病院経営に関しても、現医療体制の中で特定機能病院としてフル回転し、自前で稼ぎ出さなければ持続不可能である。「病院経営」と「学術研究」の二刀流でバサバサと切り拓く人的、物的資源を持ち合わせているだろうか? 大学病院は、地域の医療に絶大な影響を及ぼす力を持っている。自らの経営が健全であることはもちろん、「特定機能病院」は地域全体の医療を下支えすることも求められる。

私自身、定年まで大学病院一筋に勤め、その後市民病院の立場で10年間医療現場に携わった経験からすると、各大学が個別に「改革プラン」を策定すれば解決するような問題ではないように思う。「学術研究」および「病院経営」の両方とも、国家的なグランドデザインを描かなければ解決の道筋が見出せない状況であると考える。

教育・研究・診療など、果たすべき役割・機能を「再整理」するとき、個々の大学単独で決定するのではなく、それぞれの分野で、診療であれば地域医療構想会議のような、全体を俯瞰した視点を持って検討すべきではなかろうか。私見だが、大学病院同士あるいは大学病院と地域の基幹病院間の統合、再編、機能分担などを選択肢とすることも除外すべきではないと考える。

島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)[大学病院改革][学術研究][病院経営]

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