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【識者の眼】「薬機法違反の健康食品報道から見えること」大野 智

No.5199 (2023年12月16日発行) P.64

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2023-12-06

最終更新日: 2023-12-05

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最近、効能効果を謳い健康食品を許可なく医薬品として販売したなどとして、健康食品販売会社の役員2名が医薬品医療機器等法(薬機法)違反容疑で逮捕されたことが報道された1)(効能効果を標榜できるのは薬機法に定められた医薬品のみであるため、本件のような場合、「医薬品の無許可販売」といった表現になる)。報道記事からわかる範囲であるが雑感を述べたい。

■事件発覚の経緯

去年8月に神奈川県警のサイバーパトロールにて「商品を飲んだらがんが治った」といった趣旨の記載があるホームページが見つかったことが捜査のきっかけとなっている。健康増進法改正(2003年)によってバイブル本(書籍の体裁をとりながら実質的に健康食品を販売促進するための誇大広告として機能することが予定されている出版物)の取り締まりが厳しくなり、書店から姿を消したかにみえたが、インターネットの中では未だに法律を無視した誇大広告が行われている実態が明らかになったと言える。

■課徴金制度

以前(No.5081)、薬機法(2021年改正)に課徴金制度が導入されたことを紹介した。今回の事件では、ここ3年間で約1億7000万円を売り上げていたとされており、課徴金は約765万円(売上額の4.5%)となる。改正前の薬機法に定められた罰金は「200万円以下」であったことをふまえると約4倍に増えている。しかし、違反行為の摘発に伴う不利益を増大させることで違反行為の予防効果を期待するのであれば、もう少し増額してもよいのでは……と個人的に思うところがある。

■不安を抱える患者・家族

ホームページには、「がん細胞が99%消えた」などと書かれていたとのことである。がんと診断されていない健康なときであれば、このような情報は興味関心の対象外であったり、仮に目に留まったとしても疑問を抱いたり、「細胞実験のデータ」と冷静に判断できるであろう。

しかし、極度の不安に襲われているときは事情が異なる。たとえが悪いかもしれないが「借金で首が回らない人ほど怪しい儲け話に手を出しやすい」と言われるように、行動経済学の研究においても、人は危機的状況に置かれるとリスクテイカーになることが示されている(プロスペクト理論)。

つまり、がんと診断され不安に襲われている患者やその家族は、主治医などの医療者から精神的なケアを十分に受けることができず、根拠が不確かな健康食品に惹き寄せられてしまっている実態があることを、今回の事件は暗示しているのかもしれない。

【文献】

1)時事通信ニュース公式サイト:「がんが治る」と姫マツタケエキス=無許可販売容疑で女2人逮捕—神奈川県警.(2023年11月21日)
https://sp.m.jiji.com/article/show/3103831

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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