編著: | 井上善文(大阪大学 国際医工情報センター 栄養ディバイス未来医工学共同研究部門 特任教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 168頁 |
装丁: | 口絵カラー |
発行日: | 2019年02月26日 |
ISBN: | 978-4-7849-5676-0 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
中心静脈カテーテル(CVC)は,医療を行う上で必須の器材である。しかし,現在の日本では,それが適正に使用されているのであろうか。
医師はカテーテルの挿入には興味があるが,維持期の管理には興味がない。カテーテルの安全管理とは,カテーテル挿入時だけの問題と考えられている。医療安全のカリキュラムの中でカテーテルの安全な挿入について,具体的に講義はなされているのであろうか。安全管理体制の構築についての講義ばかりではないのだろうか。カテーテル感染が起こっても,それはたいした問題ではないと考えられている。感染対策の専門家は,カテーテル感染にはあまり興味がない。感染管理の専門看護師は,CDCガイドラインこそが正しいと思っている。医師はカテーテル感染が発生すると,患者が悪いと思う。カテーテル感染が起こっても,カテーテルを抜けばいい,と思っている。CVポートは感染しないと思っている。中心静脈カテーテルは非常に便利だから,いろいろなものを投与してもよいと思っている。耐圧性のCVポートやPICCを使えばCTやMRIの造影剤も投与できるから, 本当, 便利だと思っている。さまざまな目的で使うことによってカテーテル感染のリスクが高くなっていることはほとんど考えない。感染対策のカリキュラムの中に,本気でカテーテル感染予防対策について,具体的に講義はなされているのであろうか。
……と,この領域に関係している方々が読めば,お叱りを受けそうな内容で本書を紹介することにしてみた。しかし,実際,日本の医療従事者にはこのような傾向があると私は思っている。もっとカテーテルを大事に扱ってほしいと思う。CVCを挿入される時の患者さんたちの恐怖心を始めとする気持ちを理解する必要があるし,合併症のために抜去される患者さん達の失望感や不安感といった気持ちを理解する必要がある。
そういう思いで本書を編集させていただいた。挿入技術に重点を置いて,エコーガイド下穿刺の達人,静脈切開法の達人に解説していただいた。ビデオ,写真で具体的に解説していただいた。維持期の管理についても,可能な限り具体的に記載させていただいた。
お忙しい中,実際の手技の写真や細かいテクニックについて,ビデオを撮影し,編集し,そして原稿を書いていただいた執筆者に,この場を借りて感謝申し上げたい。読者の皆さまには,この本の記載を十分に理解して,患者さんたちのために,適切なカテーテル管理を実施していただきたい。本書はカテーテル管理に関係するすべての方にとって役立つ内容になっているはずである。自信を持ってお薦めする。
2019年 1月 編者 井上善文
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。