著: | 柴垣有吾(聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 112頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2010年03月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-4273-2 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
「どのような病態にも輸液の考え方は同じ」との方針のもと、病態ごとの輸液の違いは必要最小限に抑え、「輸液のキホン」を徹底的に解説しました。また、多忙な臨床医でも通読できるコンパクトな記述を徹底、「ルーチン」で処方しがちだった輸液を本当に理解するため、ぜひお手元に置きたい1冊です。
輸液に関する良書が数多く出版されている中で、わざわざこのような本を出版しても需要があるのかわからなかったが、以前に、日本医事新報社の月刊Juniorに連載したものが好評を頂いたようで、同社の方々に勧めて頂いたものが、本として結実した。
輸液の本を書いておいて、このようなことを言うのは問題があるかもしれないが、私は今でも輸液処方を間違ってしまうことが多い。しかし、その一方で、私の輸液処方の考え方は間違っていないし、きちんと輸液後の変化をモニターして、それを次の輸液内容にフィードバックすれば上手くいくから大丈夫、と言う自信も持っている。人間は神様でないし、個人の状態や反応は様々だから、最初から100%完璧な輸液処方ができる人はいない。だからこそ、理論に則った考えで輸液処方を考えるべきなのである。
ただ、輸液は始めたらそれでおしまいではなく、その輸液の効果をみて、常にその内容や量に修正を加えていかなければならない。“ルーチン”の輸液を行っても多くの患者さんでは、腎臓が適切に体液の質と量をコントロールしてくれるから、大きな問題は起こらないが、腎機能の悪い人、高齢者、重症患者さんなどでは、ここに狂いが生じる。つまり、多くの場合、どんないい加減な輸液をしても、問題が起こらないのは、医者が優秀だからではなく、輸液処方の失態を患者さんが修正してくれているにすぎないのである。輸液の勉強は面倒かもしれないが、どの科に行っても必須の知識であり、良心的な医療を行うには理解に努めなければならない。
多くの輸液の本では、様々な病態ごとに細かく章立てを行って、親切に解説しているが、忙しい臨床医にはすべてを読破することは難しい。本書は私の考えでもある「どのような病態にも輸液の考え方は同じ」を反映させ、病態による輸液の違いは最小限にとどめてある。量的には最後まで読破できるようにしたつもりだが、人それぞれ、どこから読み始めても良いように多少、内容の重複がある。この点はご容赦頂きたい。
最後に、腰が重く、作業の遅い私が本書の完成に漕ぎ着けることができたのは諦めずに叱咤激励して下さった日本医事新報社の方々のお陰である。また、聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科の谷澤雅彦先生は本書の内容を推敲し、非常に適切なアドバイスを与えてくれたことを記したい。さらに、このような仕事をしていると多少なりとも家庭の時間を犠牲にしてしまうのだが、それでも私を支えてくれる妻と小さな子供達に最大の感謝を伝えたい。
2010年初春
聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科
柴垣有吾