第2版序
『癌と臨床栄養』の初版は,がん患者の栄養管理を専門に扱った教科書がほとんどなかった2010年に出版され,好評を得ました。その後,がんの細胞や組織の代謝栄養に関しての新しい知見も数多く発見され,また,がん患者への外科治療,化学療法なども変化してきました。
多くのがん患者にとって,日々の生活での関心事は食事や栄養状態です。欧米において,がん患者への栄養指導の効果は以前から実証され,ガイドラインでも,最も高いランクの推奨度が与えられています。それにも関わらず,本邦ではがん患者への栄養指導は長く保険収載されていませんでした。しかし,最近,その重要性が本邦でも認識されるに至り,がん患者の栄養指導に新たに保険点数が付与されました。
このようながんやがん患者を取り巻く環境の変化を反映すべく,『癌と臨床栄養 第2版』が発刊されるに至りました。
第2版では,宿主であるがん患者の代謝栄養や栄養療法だけでなく,がん細胞,がん組織自体の代謝栄養にも,さらにスポットを当てました。がん自体の代謝栄養を理解することは,高脂肪低糖質食やアミノ酸インバランスといった,今後発展が期待されるがんへの代謝栄養治療の礎となります。
また,一方,がん患者に対しては,担癌生体の代謝変化を理解し,がん患者への栄養サポートやがん悪液質への対処に対する臨床的知識を深められるように,幅広い内容を編集しております。また,今回は,臨床的に重要な項目には,簡単な「症例提示」を追加して,さらにがん患者への栄養管理の理解が深まるよう工夫しております。
本書は,がん細胞から担がん患者,がん発生から終末期まで,そして,がんの基礎から臨床の代謝栄養という幅広いテーマを系統的,網羅的にまとめた教科書です。それぞれの分野でご活躍の第一人者の先生方に執筆して頂き,素晴らしいテキストが完成したと自負しております。
日常の業務でがん患者と接する医療従事者の皆様方やNSTのメンバーの方々に,ぜひ,熟読して頂きたいと思います。
最後に,執筆・編集にご協力頂いた先生方,関係者の皆様に厚く感謝を致します。
2016年晩夏 吉日
編者 丸山道生