厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」は12月10日に大筋でとりまとめた医師の偏在対策で、へき地以外で医師の確保が特に必要な地域(「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」)を対象に診療所の承継・開業支援や医師の手当増額支援などといった経済インセンティブを導入する方針を打ち出した。その財源の一部を保険者からの拠出で賄うことも提案したが、検討会としての統一見解ではないため反対意見があったことも記載した。
主な内容をみると、都道府県は厚労省が提示する候補区域を参考に「重点医師偏在対策支援区域」を選定し、当該区域を対象にした「医師偏在是正プラン(仮称)」を策定する。プランには、支援対象医療機関、必要な医師数、医師偏在是正に向けた取り組み―などを盛り込む。緊急的な取り組みが必要な事項から先行して策定し、2026年度に全体を策定する。
医師不足地域に医師を呼び込み、定着してもらうには医師が意欲を持って働ける勤務・生活環境の整備が必要不可欠。このため都道府県のプラン全体の策定タイミングに合わせ、26年度から重点支援区域に経済的インセンティブを本格的に導入。具体的には、(1)重点支援区域内の一定の医療機関に派遣される医師や従事する医師への手当の増額支援と土日代替医師確保等の勤務・生活環境改善の支援、(2)重点支援区域内の医療機関に医師を派遣する派遣元医療機関への支援―などを行う。重点支援区域内で承継・開業する診療所への支援は緊急を要する事項に位置付け、26年度を待たずに先行実施する。
これらの取り組みのうち医師の手当の増額支援の財源は、医師の人件費であることから、本来なら診療報酬で手当するべきだが、特定の地域を対象に診療報酬上の措置を講じれば、その地域の患者負担だけが増える不公平が生じる。このため、とりまとめは診療報酬以外の方法として、①すべての被保険者が広く負担する仕組みとなるよう、保険者からの拠出を求める、②医師の手当の増額支援は診療報酬を代替するものであることを踏まえ、給付費の中で一体的に捉える―の2案を提示。
さらに、保険者からの拠出について審議過程で、「保険給付と関係性の乏しい使途に保険料を充当することには著しく妥当性を欠く」といった反対意見があったことも付記した。