No.5258 (2025年02月01日発行) P.50
二木 立 (日本福祉大学名誉教授)
登録日: 2025-01-29
最終更新日: 2025-01-28
財務省は昨年4月以降、医師の地域偏在対策に診療報酬引き下げを含めることを求め続けています。
財務省・財政制度等審議会の春(4月)の「建議」は、初めて「地域別診療報酬を活用したインセンティブ措置」として、「当面の措置として、診療所過剰地域における1点当たり単価(10円)の引下げを先行させる」ことを求めました(61頁)。昨年冬(11月)の「建議」ではこの主張を繰り返すとともに、新たに「ある地域の特定の診療科に係る」「特定過剰サービス」を「減算の対象とする」ことも提案しました(41頁)。
厚生労働省(以下、「厚労省」)が昨年12月25日にとりまとめた「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」ではこれらの「経済的ディスインセンティブ」は採用されず、逆に保険料を原資とした過疎地域の医師・医療機関への「経済的インセンティブ」(支援)が含まれました。しかし、同日の財務・厚労大臣の2025年度政府予算案に向けた折衝の合意文書では、「2026年度診療報酬改定において、外来医師過多区域における要請等を受けた診療所に必要な対応を促すための負の動機付けとなる診療報酬上の対応」を行うことが明記されました。
冬の「建議」はこれらを「メリハリの効いた政策誘導」(40頁)と自賛しています。しかし私は、少数与党である石破内閣が、日本医師会(以下、「日医」)の猛反対を押し切ってこれを導入することは政治的に不可能と思います。それに加え、過去の診療報酬改定の歴史を考えると、仮に導入されても、その効果はほとんどないとも判断しています。以下、その理由・エビデンスを示します。