医療法等の一部を改正する法律案が国会で審議されており(2025年4月8日時点)、可決されれば2026年4月1日〜2027年3月31日までの間で施行されることになる。現在審議されている法律案は、①地域医療構想の見直し等、②医師偏在是正に向けた総合的な対策、③医療DXの推進、の3本柱である。これらの医療施策はどれも重要なものと認識しているが、ことに診療所でかかりつけ医として医療を提供している身として最も関心が高いのは、③医療DXの推進である。
今更ながら、医療DXとは、IT、IoT、AI、電子カルテ、クラウド等を活用することにより、業務の効率化、関係者の負担の軽減、医療の質の向上を図るものと理解している。医療に関与している関係者は多く、医療機関、支払い基金、国保連合、保険者、自治体、国と多様である。DXの活用により、すべての関係者がそのメリットが得られることが理想であろう。これらの改革によって、医療機関以外の関係者の、医療情報の収集、その活用、さらに業務の効率化につながることは想像に難くない。
一方、医療現場はどうだろうか? 医療機関はその規模や勤める人材も様々である。診療所も診療科、規模、人材は様々であるが、基本的には少数の医師(多くの診療所は1名)、少数の看護師と事務で運営していることは周知のことである。昨今のオンライン資格確認システム、電子処方箋、標準的電子カルテの導入等、医療にとって必要なシステム化であろう。
しかし、これらが日本の医療関係者のすべてに真に等しくメリットのある形で普及していくのかは、現場にいる人間にとっては疑問がある。ただでさえ看護師や事務員が不足し、いったん退職されると次の人材を確保するのに多くの診療所が苦労しているのではないか。しかもIT等に詳しい人材が必要なのに、事務員や看護師でITリテラシーの高い人材は診療所等にはほとんどいない。オンライン資格確認システムの運用、様々な申請文書、アンケート提出に時間をとられ、事務の効率化が一部を除いて、実感できていない。
また、開業医の年齢は広範囲であり、医師のITリテラシーについて格差があることは間違いない。院内のシステム構築、サイバーセキュリティー対策等自ら行える診療所がどのくらいあるのかと思う。結局、しばしば営業に訪れる外部の専門家に対価を払って、人にまかせて維持することになり、そのことで自らの医療の質が一体どのくらい高まるのか、現在のところ残念ながら具体的な検証はない。次稿では現場が効率化する具体的提案について書きたい。
今村 聡(医療法人社団聡伸会今村医院院長)[医療DX][ITリテラシー]