【概要】政府の『骨太方針2016』素案や規制改革会議答申を受け、日本医師会の横倉義武会長が5月26日の会見で、主な項目について見解を示した。『骨太方針』素案に盛り込まれていた医師偏在対策における「規制的手法」の表現が撤回される見込みとなった点を評価した。
5月18日に示された経済財政運営と改革の基本方針、『骨太方針2016』の素案では、医師偏在対策について、「地域医療構想等を踏まえ、規制的手法も含めた地域偏在・診療科偏在対策を検討する」と明示。医師の診療科・勤務地選択の自由という原則の転換点になりうる方針であることから、横倉会長は20日に行った講演で「かなり踏み込んだ内容」との見方を示していた。
しかし、素案を巡る議論を行った自民党の日本経済再生本部合同会議を経て、表現が修正される見込みとなった。
これを受け横倉会長は26日の会見(写真)で、「『実効性ある対策を講じる』という風に変更されたと聞いている」と評価した上で、「『規制的手法』にはさまざまなアレルギーがあり、取り扱いには注意していただきたい」と政府の動きを牽制した。
●「異動のフォローは出身大学の責務」
その上で、横倉会長は医師偏在の解消に向けて、日医と全国医学部長病院長会議が昨年12月に発表した「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」に基づき、対応していく必要性を改めて強調。「管理者要件への医師不足地域での勤務経験の導入、地域または診療科(基本領域)ごとの医師需給や、医師キャリア支援センターにおける診療科ごとの医師需給の把握などを提言した。異動をフォローアップすることは出身大学の責務」との考えを示した。
「頻度を含め検討」とされた薬価改定のあり方については、「薬価改定を毎年行うということは、薬価調査時に医療機関や調剤薬局、保険者、卸業者などに大きな負担を強いるばかりでなく、改定ごとに生じる事務やシステムの維持コストの増加をもたらし、結果的に納入価格の高止まりにつながる可能性がある」との懸念を示した。
●「正確な死因究明は医療保険制度の柱」
このほか横倉会長は、規制改革会議答申が死亡診断書の交付要件緩和を提言したことに言及。同会議のワーキンググループに出席し、「都会ではなく離島・遠隔地などで限定的に行われること、看護師に法医学などに関する教育を行うことが必須であると主張した」と説明した。死亡確認については、「犯罪性がないことを含め、最終的には医師が行うことが望ましい。在宅看取りを安心して進められる環境を整備するに当たり、死因の正確な究明は医療保険制度の中で疎かにできない柱であると認識している」との考えを示した。
【記者の眼】
骨太方針から「規制的手法」の表現が撤回される見込みとなった背景には、日医による自民党議員への働きかけがあるとみられる。7月に控える参院選への影響などを踏まえ、日医の意向を忖度した自民党が配慮した形で決着したようだ。(T)