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日常を支え、命を守る [お茶の水だより]

No.4786 (2016年01月16日発行) P.12

登録日: 2016-01-16

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▼今週の「まとめてみました」欄では、東京オリンピック・パラリンピックに向け対策が急がれる受動喫煙防止を取り上げた。主会場となる新国立競技場のデザインは騒動の末、建築家・隈研吾氏らの案を採用することが12月22日に決定した。
▼隈研吾氏の著書「建築家、走る」(新潮文庫)を年末年始の休暇に読んだ。養老孟司氏と対談した時の話も書かれており、「(病状が千差万別である医療の世界に)サラリーマン的な一律の管理体制が敷かれて、現場での裁量権が制限されると、患者さんにとっては地獄です。そのねじれた状況は、まさしく建築の世界でも同じです」と指摘している。
▼本書の中でも最も印象に残ったのが、「イメージは、人間の日常を支えたり、命を守ったりしません」という一節だ。これはマンションを販売するデベロッパーの「上層階からの眺め」といったイメージ戦略が、災害時のリスクなどを隠蔽していることを批判したもの。マンションの素材であるコンクリートの「頑丈で安心」というイメージも、これまでマンションが売れ続けてきた理由として大きく作用したと述べている。本書が刊行されたのは2013年だが、新国立競技場の問題と同じく昨年騒ぎになった、横浜市のマンションのくい打ちデータ偽装問題をあたかも予見していたかのようだ。
▼イメージが人間を助けないとすれば、翻って、日常を支え、命を守るものの筆頭が医療だろう。紹介した一節が印象に残ったのも、日頃の取材を通じて出会った「人間の日常を支え、命を守る」医師らの姿が浮かんできたからだ。本年も弊誌は、目の前の患者を支え、守る読者の皆様に喜ばれる情報を発信していく所存だ。ぜひ引き続きご愛読のほどよろしくお願いしたい。

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