ある日、地域の先生から声をかけられた。「痛みで困っている患者がいるんだ。まだ若いんだよ。腫瘍はね、右肩にでっかいのがある。何とかしてあげたいと思うんだけど、先生に紹介するから診てもらえないか」。
しばらくして外来に、無表情な若い男性がご両親に付き添われてやってきた。右腕はだらりと垂れ下がり、麻痺しているのがわかった。右肩から背部にかけては盛り上がり、大きな腫瘍が存在していた。紹介状を見ると、オピオイドをはじめ数種類の鎮痛薬が処方されていた。右上肢から胸部にかけての重苦しい痛みとしびれがあり、夜は1時間ごとにレスキュー薬を服用している。
座って話を聞いていると顔をしかめ、「横になっていいですか? 長く座っていると肩から腕がつらくなってくるんです」と言う。オピオイドが足りないと判断し、増量する指示を出した。次の診察で「いくらかいいです。でも、まだ痛いです」と言い、オピオイドのさらなる増量を指示し、鎮痛補助薬も調整した。少しずつ改善したかと思えば増悪し、投与量が増え続けたため経済的な負担も訴えるようになった。神経ブロックについて話してみたが、「痛みを取るだけでしょう。治らないならやりたくない。入院もしたくない」と、拒否した。
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