1995年の阪神・淡路大震災以降,災害時には「こころのケア」が自然発生的な保健医療活動の一部として行われるようになった。東日本大震災の際には,厚生労働省,大学,病院,医師会などが編成した支援チームが,現地の保健医療機関と連携して支援を行った。地域のニーズに応じて支援は長期に及んだところもあり,被災地の保健医療体制を支える役割も担った。
一方で,課題も浮き彫りになった。心のケアチームの活動要領が明確に定められていないことから,これらの支援チームの精神医療体制の中での位置づけや役割が明確でなかったこと,被災直後の精神科病院の安否確認や支援が遅れたこと,多数の支援チームの調整に多大な労力が割かれたこと,支援者たちの事前の準備や研修が系統的でなかったこと,などである。
これらの教訓をもとに,厚生労働省は,2013年4月に災害派遣精神医療チーム(Disaster Psychiatric Assistance Team:DPAT)を設立した。これは,災害の前に十分な研修を受けたチームを編成し,災害時に機動的に活動することをめざしたチームである。DPATはその後の災害で地域内あるいは広域的な連携のもとに活動しているが,どのように長期的な支援に移行していくかについては,経験と検討を重ねているところである。
【参考】
▶ 厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部精神・障害保健課:災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領について. 障精発0107第1号, 2014.
【解説】
鈴木友理子 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所成人精神保健研究部 災害等支援研究室室長