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なぜ新専門医制度が必要なのですか(吉村博邦 日本専門医機構理事長)【この人に聞きたい】

No.4873 (2017年09月16日発行) P.12

吉村博邦 (日本専門医機構理事長)

登録日: 2017-09-15

最終更新日: 2017-10-26

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  • 力のある医者になりたいと思う専攻医が勉強する場を
    つくり、国民から見てしっかりした専門医を養成する
    これが新専門医制度の原点

    〔略歴〕1966年東大卒。94年北里大教授(胸部外科)、2002年同大医学部長、04年全国医学部長病院長会議会長、16年7月より現職

    新専門医制度が2018年度からスタートする。当初は17年度開始の予定だったが、医師の地域偏在の懸念を受けて、昨年7月に延期が決定。整備指針等の修正を重ね、今年8月、日本専門医機構が来年度の開始を宣言した。機構の吉村博邦理事長に新制度の意義など話を聞いた。

    ─新専門医制度の仕組みは、厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」報告書(2013年4月)に基づいていますが、専門医の質の統一の議論はそれ以前からありました。先生はいつから議論に関わってきたのかを含めて、これまでの経緯を教えてください。

    私は呼吸器外科医として、日本胸部外科学会、日本呼吸器外科学会の専門医制度に携わっていたので、30年以上専門医制度の議論を続けていることになります。

    日本の専門医制度は1962年の日本麻酔科学会が最初です。その後、各学会が独自に立ち上げ、81年に22学会が「学会認定医制協議会」(学認協)を発足し、統一的に医療レベルを向上させる活動が始まりました。学認協は組織改編を重ね、日本専門医機構となります。ちなみに、現在機構には102の専門医が登録されています。

    私と機構の関わりは、2004年に当時の日本専門医認定制機構の理事に就任したのが最初。その後、副代表や監事という立場でずっと関わってきました。

    厚労省報告書は集大成

    学認協からの35年を振り返ると、「専門医の質を標準化すべき」「医療界としてオーソライズされた認定制度にすべき」という議論が繰り返し行われましたが、理事長が代わるたびに議論がリセットされたり、学会ごとの利害が一致しない部分もあり、具体化が難しく、先進国で統一的な後期専門研修の仕組みがないのは日本だけという状況になってしまった。

    しかし、厚労省検討会の報告書により、ようやく仕組みが固まりました。報告書はそれまでの議論の集大成であり、今の機構の活動に引き継がれています。

    報告書では現状の問題点として、「専門医制度を持つ学会が乱立して、制度の統一性、質の担保に懸念を生じる専門医制度も出現するようになった結果、現在の学会主導の専門医制度は患者の受診行動に必ずしも有用な制度になっていない」と指摘しています。

    その上で具体的な仕組みとして、①第三者機関が制度の統一化・標準化を図る、②基本領域を取得してからサブスペシャルティ領域を取得する2段階制とする、③「総合診療専門医」を19番目の基本領域とする、④専門医の仕組みはプロフェッショナル・オートノミーを基盤として構築する、⑤研修プログラムを作成する、⑥研修施設群を形成してローテート研修を行う─などを提言しました。

    残り2,140文字あります

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