【質問者】
成本 迅 京都府立医科大学大学院医学研究 精神機能病態学教授
現在の在宅医療の大半は高齢者を対象としており,在宅医療において認知症診療は重要な位置を占めています。このため,在宅医療における精神科医の役割は多岐にわたっています。
1つ目の役割は,認知症診断をきちんと行うことです。アルツハイマー病,血管性認知症,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症といった四大認知症をきちんと診断し,各診断に合わせた対応法や経過,予後の見立てを伝えることは,認知症診療に慣れた医師でなければ難しいことが多いです。
2つ目の役割は,行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)への対応を精緻に行うことです。認知症患者の介護者が最も介護負担を感じる要因としては,BPSDの悪化による影響が大きいと言われています。また,せん妄の悪化やBPSDのために訪問診療が困難と判断されることも稀ではありません。このため,精神科医が対応しBPSDの治療を在宅や施設で行うことは,認知症患者が住み慣れた場所で生活することへのサポートにつながります。症状が起きている現場に実際に行き,BPSDが生じる仕組みを解明し環境調整を行うことは,BPSDの症状緩和を図るためには重要ですし,実際の対応方法を自宅で介護者に指導することも有効です。
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