編著: | 鈴木 央(鈴木内科医院院長) |
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判型: | A4判 |
頁数: | 136頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2024年03月20日 |
ISBN: | 978-4-7849-0397-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆在宅医療は特別なものではなく、もはや「当たり前」に存在するようになりました。ところが、病院や診療所とは違う在宅現場における対応・手技には「共通のマニュアル」はありません。
◆そこで本書では、実際に在宅医療を行っている著者たちによる「現場での対応」をまとめました。「特別な環境だからできる」ではなく、「多くの医師の参考となる」実践的な内容となっております。
◆在宅医療をすでに行っている医師にも、これから始めようかと考えている医師にもおすすめの1冊です。
Ⅰ.総論編
〈1〉在宅医療を始めるとき
〈2〉コミュニケーション
〈3〉在宅医療における意思決定のすすめ方
〈4〉服薬管理
〈5〉栄養管理
〈6〉社会的苦痛
〈7〉出発する前に確認しよう
〈8〉在宅医療のペーパーワーク
Ⅱ.手技編
〈1〉在宅での輸液
〈2〉高カロリー輸液
〈3〉経管栄養
〈4〉持続皮下注射
〈5〉生活期リハビリテーションの基本的な考え方
〈6〉摂食嚥下リハビリテーション
〈7〉褥瘡
〈8〉便秘対策
〈9〉尿路管理
〈10〉腹水穿刺とCART(腹水濾過濃縮再静注法)について
〈11〉胸水穿刺手技
〈12〉在宅酸素療法
〈13〉NPPV・CPAP
〈14〉在宅ネーザルハイフローセラピー
〈15〉人工呼吸管理・気管切開・排痰補助
〈16〉骨折への対応
〈17〉緊急時の対応:誤嚥性肺炎,尿路感染症
〈18〉緊急時の対応:腹痛,吐血,下血
〈19〉緊急時の対応:意識障害
在宅医療はこの20年,かなりの普及を見せた。大都市圏,地方都市圏で在宅医療を提供する医療機関がないという場所はほとんどなくなっていると思われる。過疎地域でもいわゆる僻地診療所が,外来診療だけでなく在宅医療も提供している。
これだけ多くの医療者が関わっているにもかかわらず,在宅医療で行われる医療手技には共通のマニュアルは存在していない。それは,それぞれの医療者が他の医療者の目の届かない患者宅でひとりで行っていることが多く,それぞれの医療者ごとの手法があり,共通のコンセンサスが必ずしも得られていなかったためである。在宅医療の密室性というべきものなのかもしれない。それでも共通の手法は存在する。痛みのコントロールや輸液の方法,今回本書で紹介しているのは,執筆者個人の独特の方法というより,より多くの医療者が参考にできる内容である。
在宅医療は患者とその家族の生活を支援するためのものであり,人生を肯定し,命を大切にする。医療的処置はその中ではたいした問題ではないのかもしれないが,ひとつひとつの小さな(?)医療的課題を確実に解決していくことは,患者や家族の安心,満足,納得につながる。そのためにも対応できる医療的手技をより多く知り,確実に実行することは,きわめて重要であり,より深く学ぶ必要があるのである。
今後,高齢化の進展のため,都市部では病床逼迫が生じうる。このとき,従来の在宅医療の枠を超えた医療処置が在宅でも必要になる可能性もある。酸素需要のない肺炎高齢者の治療,高度脱水例への対応,心不全急性増悪,COPD急性増悪への対応,高カロリー輸液への対応,などである。このような時代はすぐそばにやってきている。より早くから対応し,より深く理解し,より確実に実行していくことが求められるのではないだろうか。
最後になったが日本医事新報社の村上由佳氏には遅れ続けた原稿を忍耐強く待ち,出版を諦めずにいてくれた。コロナ禍のなか,突然届いた執筆依頼にもかかわらず心良く執筆いただいた執筆者の皆さんと村上氏に心より深い感謝を申し述べたい。
2024年3月
鈴木内科医院院長
鈴木 央